バイデン大統領誕生で、アメリカの「尖閣問題」への対応はどのように変化しいくのか?そして、日本はどのような防衛戦略を立てるべきなのか?政治学者のロバート・エルドリッヂ氏に「日米豪印」の4か国で防衛する必要性など、新たな尖閣防衛戦略についての話を聞きました。
【ロバート・エルドリッヂ氏】
エルドリッヂ研究所代表。政治学博士。
1968年米国生まれ。
神戸大学大学院法学研究科博士課程修了。
元在沖縄米海兵隊政務外交部次長。
東日本大震災の「トモダチ作戦」の立案者。
年初から活発化する尖閣問題をどう見るか
里村英一幸福実現党政調会長(以下、里村)
2021年世界がどうなるか、ロバート・エルドリッヂさんにお話を伺いしています。次の問題として やはり日本にとっても一番気になるところ「尖閣諸島」に関しての中国の動きです。今年は1月1日の元日から連日中国の船舶が尖閣周辺に現れることが続いております。これについて エルドリッヂさんに日本としてどのように対処すべきかについてお話しをお伺いしたいと思います。
尖閣問題に有効な手を打ってこなかった日本政府の責任
エルドリッヂ氏
この番組で何回か尖閣問題について申し上げてきたんですけれども、その意見は全然変わっていません。むしろ、ますます重要となってきました。なぜなら、日本は49年間実効支配を示すために実際には何もしてきませんでした。中国がそれを見ていて、どんどん調子に乗って、飛行機・船の数を増やしたり、規模を大きくしたりして、領海侵犯の回数を増やしたりしているのは、日本は戦わないと中国側は強く感じているということです。したがって、これは安全保障の問題だけではなく、私はこれを緊急的に行政的・政治的に対応すべき問題です。したがって、実効支配を早く示せば抑止力になるんですけれども、示さなければ抑止力になりません。特に、国際社会からすると「日本は守る意思がない」あるいは「尖閣は本当に自分たちの固有の領土であることの自信がない」ということを逆に示していると思います。だから、早めに実効支配を示すことが重要です。
バイデン政権発足後に意思表示しても手遅れになる恐れ
特にバイデン政権が誕生する前に表明しないと、誕生してからはできなくなるという懸念があります。尖閣のほうに実効支配を示そうとしたら、たぶん バイデン政権は止めると思います。実効支配というのは、何回か申し上げているように公務員の常駐・港やヘリポート、灯台、気象台を作るということです。そういった普通の離島にあるようなもの、あるいは普通の国がやるものは日本ができなくなる状態になります。
中国・ロシア・韓国が領有権問題で同盟関係になる恐れ
里村
国際社会の中では権利の上に安住するものは、その保証は得られないというのが鉄則なんです。日本は安住して、あぐらをかいている状態で、これは逆にいうと国際社会や中国に対して「日本は尖閣について何も主張するつもりはありませんよ」と言ってるに等しいような状態ですね。
エルドリッヂ氏
おっしゃるとおりです。私が一番心配してるのは、例えば北方領土・竹島が完全に取られてしまっていますが、残念ながら返ってきません。もし、尖閣が取られてしまったら同じ状態になります。つまり領土問題がすべて日本にとって不利な決着の仕方になります。ここで、中国・韓国・ロシアは、日本に対してある種の同盟関係を作って、もし日本が領有権の主張とか、あるいは返還の主張をするとか、何かの具体的な行動をした場合は、第三者が協力して対抗することになりえます。さらに国際政治でいえば、もし中国が尖閣を取ってしまったら「新しい現状」が生まれることになります。そして、いつの間にか中国が「現状維持派」になり、日本が返還を求めたり、領有権の主張や何かの行動をした場合は、日本がいくら正しくても、日本が現状打破・現状変更する国になります。現状打破・現状変更する国は国際政治では嫌われるのです。したがって、海上保安庁・海上自衛隊に任せっぱなしではなく、政府が行政・政治を実効支配をちゃんと示せば中国にとってやりにくくなるのですけども、何もやらないから中国にとって実効支配しやすくなっている状況です。
里村
本当に、何も申さない国・日本みたいな感じになってます。
尖閣問題をバイデン氏はどのように対応していくのか
アメリカが日米安保第5条の適用を見送る恐れ
エルドリッヂ氏
バイデン氏がもし尖閣に有事があった場合に何をするかというと、日本の意思決定は遅いし、危機管理能力はゼロに近いです。そこで日本が何時間、あるいは何日間で躊躇した場合、日本が行動しない時間を理由に日米安保条約第5条は適用させないというのがバイデンの抜け道になります。だから、日米安保条約があるから従うつもりだったけども、日本が自分の領土を守ろうとしないので、アメリカは安保適用しないという建前を作ると思います。
里村
日本側の意思表示がなければだめですもんね。
エルドリッヂ氏
意思表示だけじゃなく「行動」が大切です。そういう状態になり得ると思います。
尖閣問題の中心、石垣島防衛のあり方
八重山防衛協会が海上自衛隊誘致の要請書を防衛大臣に提出
里村
そういう中で、尖閣のご当地である石垣島からは、やっぱり守ってくれという動きは起きているわけですもんね。
エルドリッヂ氏
今年の夏から秋にかけて、八重山防衛協会の中で海上自衛隊の誘致を審議されていました。そして、新しく防衛大臣になった岸信夫さん宛に要請書を出しています。
10月に防衛省に行って要請書を担当者の方々に渡したあとに記者会見されていたんですけれども、残念ながら全国のニュースにはそんなに取り上げていませんでした。私はこれが非常に重要なものだと思ってます。八重山防衛協会の方が記者会見されたときの発言ですけれども、実際に海上自衛隊を配備するまでは、3年から10年ぐらいかかるかもしれません。なぜなら、兵力の問題や予算の問題、また自衛隊の中でさまざまなニーズがあるので、果たしてそれができるのかという問題はあるんですけれども、私は石垣の海上自衛隊配備はすごく重要だと思っています。
日米豪印4か国での尖閣防衛戦略とは?
エルドリッヂ氏
3年~10年かかるということだったら、その間にまず海上自衛隊の船が石垣のほうに定期的に訪問する。例えば、毎月1回ぐらい、あるいは2カ月に1回、3カ月に1回ぐらい。そういったプレゼンス(存在感)を示すことが必要です。そこで海上自衛隊だけではなく、例えば、在日米海軍の第七艦隊のほうにも依頼して、米海軍の軍艦と自衛隊の艦艇が定期的に訪問するようにします。例えば、今1月ですけれども、1月に海上自衛隊の船が行って、2月にアメリカの海軍の船が行って、3月にまた海上自衛隊の船が行くそういった形で寄港して、訪問してプレゼンスを示すようにする。さらに、クアッド(日米豪印戦略対話)という日本・アメリカ・インド・オーストラリアの4カ国(つまり日米以外の2つの国)にも声をかけて、インドの海軍、あるいはオーストラリアの海軍も寄港を実現させることができれば、海上自衛隊の負担がさらに減らせます。
Quad(クアッド)日米豪印戦略対話とは・・・
インド洋と太平洋にまたがる地域での情勢安定を目指す
日米とオーストラリア、インドの4カ国による外交・安全保障の協力体制
そこで、さらに安全保障関係のあるイギリス・フランス・ドイツの3カ国にも声をかけて、彼らの船も西太平洋に来るときは石垣に寄港・訪問してもらいます。そういう形で1年間、必ず一隻が石垣を訪問している状態を構築すればいいと思います。1年目の前半は海上自衛隊、1年目の後半から米海軍を入れて、3年目の前半はクアッドの国々、3年目の後半からはイギリス・フランス・ドイツの3カ国も関われば、最初の3年間はカバーできます。そこで、防衛省と納税者の皆さんが頑張って配備体制を作ってほしいと思います。
里村
それは極めて有効な戦略ですね。しかも現実的だし。本当に物申し、行動して示していく。それは決してよその国と戦争する備えではなくて、アジアの平和を守るための備えという意識を私たちは持たないといけませんね。
「抑止力」として軍事力が尖閣防衛には必要不可欠
エルドリッヂ氏
おっしゃるとおりです。軍は警察と同じようなものです。国内的には警察がいることによって安心できます。泥棒は変な行動ができないし、反社会的なグループは行動ができません。軍は世界の警察です。だから、いることによって監視したり牽制をしたりする「抑止力」そのものです。もし、石垣で実現できれば私は連絡官として行きたいです(笑)。石垣が大好きなので、ぜひ行きたいと思っています。
里村
私たちザ・ファクトも石垣が大好きで、守らないといけないと思っています。その意味ではやっぱり、石垣にとって今月は「尖閣諸島開拓の日」が1月14日にあって非常に重要な時期ですけれども、日本国民が石垣が直面してる状態に関心を示して、石垣の応援をしてほしいと思っています。
エルドリッヂ氏
特に観光のほうも今、大変ですけれども、やっぱりいろんな形で石垣の応援してほしいですね。
里村
分かりました。辺野古だけでなく、石垣にも目配りや気配りが必要です。それがひいては、日本とアジアの平和を守ることにも繋がるという非常に重要な提案を今日は頂きました。どうもありがとうございました。
エルドリッヂ氏
ありがとうございました。
米大統領選2020~ロバート・エルドリッヂ氏インタビューシリーズ
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https://thefact.jp/2020/2796/
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