1月20日、厳戒態勢の中、米バイデン政権が発足した。この政権移行期の混乱に乗じて中国は、香港弾圧、台湾の領空侵入、尖閣諸島沖への武装公船侵入など、軍事的な威嚇を続けている。これに対してトランプ政権時代の対中強硬政策を継承するバイデン政権だが、新体制下で米中関係はどうなるのか?中国研究者で国際情勢に詳しい澁谷司氏に話を聞いた。

【内容】
00:00 バイデン政権発足期に軍事活動を活発化する中国の意図
03:09 中露関係はどうなるのか?
06:14 「バイデン政権」が存在しているのかが疑問
10:30 これから世界情勢はどうなるのか?

澁谷先生プロフ写真

澁谷 司(しぶや・つかさ)氏
1953年生まれ
アジア太平洋交流学会会長。元拓殖大学海外事情研究所教授。
ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)のビジティング・プロフェッサー。
東京外国語大学中国語学科卒業後、中国・台湾など、
東アジア国際関係論の専門家として活躍している。

バイデン政権になって活発化する中国の軍事行動

2S

里村英一幸福実現党政調会長(以下、里村):
2月に入って中国が海警法を改正して海上警備行動において武器使用を可能にしたというニュースが流れました。そしてその直後に尖閣諸島周辺に現れた中国公船が武器を所有しており、日本の漁船を追いかけまわすという事件も発生しています。非常にバイデン政権になってから中国の活動が活発化しているように私には思われるんですが、今日はバイデン政権発足後の米中関係について、中国問題の専門家の澁谷司さんにお伺いしたいと思います。澁谷さん、よろしくお願い致します。

澁谷氏:
こちらこそよろしくお願いします。

中国はバイデン政権の出方を試している

里村:
ということで、早速ですけどバイデン政権発足前後の中国の動きについて、澁谷さんはどのようにご覧になってますでしょうか?

澁谷氏:
バイデン新政権になってからアメリカがどのように動くのか、中国側としては試してるんじゃないかと思います。元々、習近平さんとしてはトランプさんが再選されるよりも、バイデンさんが新しく大統領になった方が組みやすいと。なぜならば、習近平さんとバイデンさんはお互いに副大統領と副主席の時に少なくとも4回は個人的に会っていまして、関係が深い。あとはバイデンさんの息子さんのハンター・バイデンさんもウクライナ関係で中国との関係が深いということで、とりあえず中国側としてはどんな対応を見せるのかということでバイデン政権を試しているという風に考えるのがいいのかなと思います。


<参考動画>
バイデン氏の息子のスキャンダルを暴いたドキュメンタリー映画「ドラゴンに乗って:バイデン家と中国の秘密 (原題: RIDING THE DRAGON: The Bidens’ Chinese Secrets)」【日本語字幕版】

★映画YouTubeサムネイル

里村:
そこ、すごく私は大事な見方だと思います。というのも日本のメディアですと、トランプ大統領は経営者で政治に素人だったからダメなんだと。そしてバイデン大統領になって、バイデン大統領はベテランなんだと、政治のエキスパートなんだと、だから安心できるという見方があるんですけど、これは裏を返すとバイデン大統領の出方は中国からしたらすごく予測がしやすいという部分があって、しかしトランプ大統領の場合は予測不可能の部分が多かったと。そういう意味でいろんな球を打つことで、バイデン大統領がどこまで踏み込むつもりなのかを知るために、バイデン政権の出方を探っている状態じゃないかという風に見るわけですね。

澁谷氏:
はい。それが一番普通ですよね。それから、バイデンさんがもし中国と仲良くやっていこうっていうことになれば中国経済も復活し、それから一帯一路なんかも非常にうまくいく可能性がありますけれども、もしバイデンさんがトランプさんと同じような政策を取ったならば、今の習近平政権はかなり苦しい状況になることになると思いますので、だからできればバイデンさんと仲良くしたいというのが今の習近平さんの本音だと思います。

中国は出方を試している

バイデン政権で中露関係はどうなるのか?

プーチン大統領は習近平氏を良く思っていない

里村:
なるほど。中国のもう一つの動きとしてはロシアに対する動きなんかも日本としては非常に気になります。中露関係が親密になってきますとやっぱりこれは日本の国益上もマイナスが大きいんじゃないかと思います。その辺はいかがでしょうか?

澁谷氏:
まあ基本的にプーチンさんは習近平さんをあんまり好きじゃないようなので、現時点ではおそらく中露がかなり近い動きをすることはないと思いますけれども、トランプさんがもし再選されていたならば、「トランプ・プーチンライン」で習近平さんを攻撃するというか、そういう方向に向かったと思うんですよね。

里村:
そうやって見ますと今、これも一つバイデン大統領になってから実質的に始まりは去年からなんですけど、プーチン大統領の政敵のナワリヌイ氏が毒殺されそうになったということで、非常にデモまで起きてロシアで活発化していると。これ穿った見方なんですけど、これはトランプ大統領に対して「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」という形でいろんなデモが起きたと。こちらの方は今後「ナワリヌイ・ライブズ・マター」という感じでデモが起きていて、もちろんナワリヌイさんが悪いというわけではないですけども、同じような構図がアメリカとロシアのトップに対して起きてきたと、この背後にはアメリカのBLM運動にも中国の動きが噂されましたし、ロシアにも中国の動きがあるんじゃないかと。つまり中国にとって、習近平さんにとってプーチン大統領という強いリーダーがいるロシアはやっぱり避けたいというのがあるんじゃないかと思うんですけど、その辺はどうですか?

ナワリヌイ氏人物紹介

澁谷:
ご指摘の通りだと思います。習近平さんとしては、プーチンさんに早く引退してほしいと思っているんじゃないですか。しかしプーチンさんはしばらくまだ政権にとどまる可能性は高いわけですよね。ところが習近平さんの方が逆に言うと、ご存知のように、もしかすると引退しなきゃいけない可能性もありますよね。

里村:
え?習近平がですか?

澁谷氏:
なぜかと言ったら反習近平派がいつも足を引っ張ってますよね。それと同時にバイデンさんが今、政権を取ったと言ってますけども、いわゆるトランプ政権が最後になって、特にポンペオ国務長官がいろんな布石を打ちました。それで中国に対してかなり強硬な姿勢を見せて、その政策をブリンケン新国務長官が引き継ぐような形になってますので、あんまり中国としては面白くないわけですよね。

<参考動画>

米大統領選に中国が不正介入?「習近平派」vs.「反習近平派」の権力闘争の内幕(ゲスト・澁谷司氏)【ザ・ファクト】

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澁谷氏『そもそも「バイデン政権」が存在しているのかが疑問』

澁谷氏:
ですからそこのところが非常に大事で、トランプ前政権が行ってきた対中強硬政策が依然として続いていると考えた方がいいかもしれません。ただしそれはあくまでもちょっとカッコ付きのところがありまして、なぜかというと、そもそもバイデン政権が存在するのかどうか、私はちょっと疑問に思っています。

里村:
存在するかどうか・・・。要するに空白状態じゃないかと?

澁谷氏:
空白状態というか本当に政権を握っているのかどうか私は疑問視しています。

バイデン政権が存在しているのかが疑問

里村:
それは例えばどういうことから?

バイデン氏が出した大統領令を州知事が拒否

澁谷氏:
今いろんな形で「バイデン政権は、何かおかしいよな」と、みんな思い始めてるんですよね。なぜかと言えば例えば、大統領令で一番最初に出したものですけども、トランスジェンダーの男子陸上選手が女子の種目にも出られるということを最初に上げてますけども、しかしそういうようなことは州のトップからすると非常にけしからんという話であるということでひっくり返すということがありました。更にこれとは違う大統領令に関しても何州かが、「それは受け入れられない」ということで州で拒否しているというケースがあるわけですよね。ですから要するにバイデンさんが大統領令を出しても州がNOと言えば実際に行われない可能性が高いわけです。

副大統領がバイデン大統領に代わり各国首脳と電話会談

澁谷氏:
更に言うならばカマラ・ハリス副大統領がなぜか各国の首脳と電話会談して、バイデンさんは電話会談をしていないという風なことを考えると、どうも本当にバイデン政権が存在しているのかよくわからない

ホワイトハウス文書

(ホワイトハウスの公表文書)原文はこちら

里村:
確かに普通は新大統領が就任すると、たくさんの映像がホワイトハウスの大統領執務室からどんどん最初は流れてきます。あるいはホワイトハウスの記者会見場に現れる映像とかたくさん見るんですけども、確かにいろんなニュースで私もあんまりそういうシーンが今回見てないなと思われるんですけども、こういうケースは今まで国際問題を研究していて、澁谷さんから見て、新大統領でこういうことってあったんですか?

就任から数日の間に40本の大統領令を発出

澁谷氏:
いや、ないですね。ないし、それに大統領令を1~2週間で40本も出すとかっていうことはあり得ないですよね。普通だったならば数本ですよね。今までの大統領令は。何でそんなに急いでたくさんの大統領令を出す必要があるのか。そういうことを考えますと、バイデンさんがちゃんと政権を握っているかどうかっていうのは私は疑問視しています。

里村:
にわかに信じがたい話なんですけども、ただザ・ファクトでもバイデン支持派の中にはカマラ・ハリスに実権を握らせるんだという話は、昨年の11月に報道しておりまして、今のお話を伺っているとカマラ・ハリスの動きが目立ってきているのはそれなりに筋が通るというか、符合するなという感じがしますね。

大統領令を州知事が拒否

<参考動画>

【米大統領選】誰がなぜ不正選挙を企てたのか?【ザ・ファクト×ロバート・エルドリッヂ氏】

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中国の狙いは「アメリカの分断」

中国はアメリカの分断を望んでいる

里村:
民主主義の国でも正におっしゃったように権力の空白というのが本当に有り得て、もしかするとアメリカが今、その状態かもしれないと。そうした時に今日の一番のテーマの、今後中国がそのように見立てたらどのような形で中国の外交や世界戦略は動いていくということになると思われますか?

澁谷氏:
中国としてはアメリカが分裂して混乱が起きれば非常にいいと思っていたわけですけど、残念ながら今のところそういう風には動いていない。それどころか、先ほども言いましたようにブリンケン新国務長官がかなりポンペオ前国務長官の政策を受け継いでいるということを考えますと、これは全然いままでのトランプ政権と同じであると。しかし中国には切り札があって、それはバイデンさんと習近平さんの近しい仲と、息子のハンター・バイデンさんのいろんなスキャンダルを中国は握っているから、そこで強請ることができるかもしれないというところではないかと思います。

里村:
そうしますと、今日お伺いした話の結論になってくるんですけど、日本のマスメディアでは相変わらずノー天気に「バイデン大統領になったらアメリカの分断が終わる」とか、世界協調の時代が始まるような見方が見られるんですけども、澁谷さんはどのように見られますか?

アメリカを分断したのはトランプ氏ではなく民主党政権

澁谷氏:
私は全然、分断どころか、元々分断を起こしたのは民主党政権だと私は思ってるんですね。例のBLM運動とかアンティファとか、そういう運動で過激なのは結構、民主党政権が支援したグループではないかと思っています。元々分断っていったってアメリカは元々いろんな価値観を持った方もいらっしゃるし、それからいろんな人種の方もいらっしゃいます。そういうことを考えると、分断云々という前に、アメリカという国は元々サラダボウルの中にいろんな要素があって、それをごちゃまぜにしているだけであって、分断も何も初めから分断はあるわけで、それを協調路線で上手くやっていくというのは中々難しいと思うんですよね。ですからおそらく、最終的にトランプさんがもう一度政権に返り咲く。そういうことが私としては望ましいのかなと思っています。その方が、世界的に中国が勢力を拡大する中でトランプさんがもう一度、中国の動きを止めるということでは、個人的には望ましいのかなと考えています。

中国はアメリカの分断を望んでいる(2s)

里村:
要するに逆に言えば、トランプ、あるいはトランプ的なものがなければ中国の動きは益々苛烈になっていくと理解すればいいでしょうか?

澁谷氏:
はい、仰る通りです。

里村:
まあ今年は中国のいろんな動きが海警法の改正のみならず起きてくると思います。引き続き、澁谷さんからそれは、アメリカはどうなのか、中国はどうなのかという点についてお伺いしたいと思います。今日はありがとうございました。

澁谷氏:
こちらこそ、ありがとうございました。

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