HS政経塾第1期生でエジプトのカイロアメリカン大学に留学し、アラビア語の学習と民主革命後のエジプト情勢について実地で研究した経験を持つ城取良太氏に、「よくわかる中東問題(5) イスラムから愛されるニッポン―歴史編―」と題して、お話をうかがいました。

イスラムは危険と安直に考えず冷静になるべき

イスラム国による日本人人質殺害事件以来、イスラム圏の国は怖いというイメージが広がっているようです。ヨーロッパなどでも「イスラモフォビア」というイスラム恐怖症が広がっていますが、「イスラム=危険」という安直な考え方は日本人としてやめたほうがいいでしょう。冷静に日本人として独自の目線をイスラム圏の国々に対して持つことが大事だと城取氏は話します。

トルコに代表される中東圏での親日事情

日本人としての独自の目線とはなんでしょう。日本は中東・イスラム圏の国から非常に好かれ、尊敬されています。2012年に外務省が世論調査を行った結果、トルコ国民の8割以上が日本とはいい関係にあると答えています。また、中東以外の国でトルコがパートナー国として認めている第1位は日本だという統計結果も出ているのです。「トルコに行くと、男性も女性も”モテる”」とも言われていますが、中東に詳しい城取氏は自身の実感として、トルコだけでなくどこへ行っても日本人は愛され、好かれたと話します。

日本の歴史が中東圏で尊敬を集めている

乃木希典、東郷平八郎といった人物への尊敬

なぜ日本はそれほど中東諸国に好感をもたれるのでしょうか。城取氏は、さまざまな要因のなかでも第1に、日本が彼らから見て本当に輝かしい歴史を持っている点を挙げました。日本の近現代史、明治維新以降の歴史、とりわけ日露戦争のところがよく言われるとのこと。超大国ロシアに対して向こうを張って勝った乃木希典、東郷平八郎といった人物が、トルコ、イラン、エジプトなどで尊敬されています。

100年前に日本を賛美したエジプト人政治活動家

エジプトを近代国家へと変革した政治活動家、ムスタファー・カーミルという人がいます。およそ100年前の人で、英国からの独立を達成するために、日本の発展の秘密を分析しました。1904年に日露戦争に関する書籍『昇る太陽』を刊行。日本の奇跡的な勝利を賛美しています。たとえば「不敗の国と思われていたロシアを倒したこの民族はいったい何者なのか」といったり、明治天皇を「かの偉大な人物」という一節があったりするほか、「日本の歴史こそ東洋の諸国に最も有益な教訓を与えてくれる」とも記されています。また別の書簡では、「日本人こそヨーロッパに身の程をわきまえさせた唯一の東洋人ではないか。どうしてその日本人を愛さずにいられようか」と語っています。

日本はアジアの中で「軍事的な英雄国家」

そうした人物が、100年前のエジプトにいたということです。今我々が世界で経済的・文化的に尊敬されているということとは別に、100年も前からすでに高評価を得ていたのです。日本はアジアの中で「軍事的な英雄国家」でありました。大東亜戦争においては残念ながら負けてしまいますが、アメリカに対して4年近く戦ったというところは尊敬を受け、そしてアジア・アフリカの同胞たちを植民地支配から解放しようとしたその精神は、今も彼らに伝わっています。

イスラム国による人質事件をどうとらえるか

イスラム国の電子広報誌「ダービック」の巻頭言に、「第二次世界大戦以来、西洋の奴隷になった日本政府に恥をかかせるために今回の人質事件、殺害事件を行った」と記されています。これについて城取氏は、彼らにとっては尊敬してやまない日本がどうして簡単に欧米側に”へいこら”するんだ、という意味で彼らにしてみれば裏切られたという感じがあるのだと話します。

イスラム教に対する疑念が日本国内で持ち上がっていますが、真実に目を向けると、多くの中東圏、イスラム教圏の人から日本は国としても、国民としても愛され、尊敬されています。日本人はまず、この事実を知るべきではないでしょうか。