1月16日に行われた台湾総統選挙で
民進党の蔡英文氏が総統に当選。
台湾初となる女性総統が誕生した。
また、立法院選挙でも民進党が大躍進。
単独で過半数を獲得し、8年ぶりに政権を奪還した。
一夜明けた今日、日本では報道されなかった
「台湾総裁選」の裏側を
王為之さん(幸福の科学東アジア本部長)に聞いた。
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現地レポート! 日本では報道されなかった「台湾総統選」の裏側②
選挙結果をどう見るか?
里村 王さん、よろしくお願いします。
王 お願いします。
里村 さて、こちらが選挙結果ですが、蔡英文氏が
約689万票。
これに対して、これまで与党だった
国民党主席の朱立倫氏は約381万票。
里村 300万票の差が開いていますけど、
王さん、これは圧勝と言っていいんでしょうか?
王 これは圧勝ですね。
びっくりの数字ですね。
これは圧勝です。
里村 もう一つですね、台湾立法院選挙。
台湾の立法院は日本の国会にあたりますので、
今回の選挙は衆議院総選挙のようなもの、と言えます。
ここでも民進党が68議席と躍進しました。
改選前は40議席ですから28議席増やして、
単独過半数を制したわけです。
一方、与党だった国民党は
改選前の64から35に議席を減らしました。
王 この35という議席数は1949年に
中国国民党が台湾に本拠地を移して以来、
最低最悪の議席数です。
現地新聞はどう報じたか?
里村 まさに「歴史的敗北」ですね。
王さん、一夜明けて、台湾のマスコミは
どんな反応でしょうか?
①蘋果日報
王 各紙、蔡英文氏の勝利を報じています。
これは「蘋果日報」ですが、こんなに大きく。
「蔡英文 狂勝」と書いてありますね。
里村 「狂勝」(笑)。
日本では使われない表現ですが、
どんなニュアンスなんですか?
王 これはですねえ、圧勝より圧勝、です(笑)。
里村 圧勝よりもう一段すごい、と(笑)。
②自由時報
王 そうですね。
それでこちらが台湾最大の購読者を
誇る「自由時報」ですね。
里村 「台湾首位女総統」…と。
③中国時報
王 これはやや中国寄りの「中国時報」でも
「大勝です」と報じられています。
なぜ、政権交代が起きたのか?
里村 投票結果を分析すると、国民党の地盤が
民進党に持っていかれた、と。
王 ぜんぶ持っていかれました。
里村 そういう意味では、今回の選挙で地殻変動が
起きたかな、という感じがあるんですけど。
王 そうですね。
王 今回の選挙の前哨戦としては、
一昨年12月の台北市長選がありました。
その時にすでに今回の国民党大敗の兆しがあったんですよ。
しかし、その後一年間、馬英九・国民党政府は変わらなかった。
変わらなかったどころか、
昨年11月に習近平との会談も行いましたし、
さらに中国寄りになっていったんですね。
その結果、今回の選挙結果になったんですね。
里村 なるほど。
この政権交代が起こった原因を
もう少し詳しく教えてください。
理由①「馬政権は中国と近づきすぎた」
王 主に原因は二つあると思います。
一つは「中国寄り路線はもうイヤだ」という人々の思い。
そもそも馬英九氏が当選した時の公約は、
「台湾の経済をよくしていく」でした。
「中国との関係を緊密することで
台湾経済はよくなっていきますから、
「一票ください」と言ったんです。
それを信じて多くの人が一票を入れたんですけど、
中国との関係が緊密になっても、
かえって、経済が悪くなったんですね。
里村 なるほど。
王 それだけじゃなくて、中国と近づくことで、
台湾としてのアイデンティティ、
台湾人としてのアイデンティティが
失われつつあるんですよ。
だから、今回の選挙では、これ以上、
中国と接近するのは「イヤだ」と。
「台湾は台湾」「台湾は自分の道を歩んでいくべきだ」
いうことで、多くの人が蔡英文氏に
票を入れたわけですね。これが一つ目の原因です。
里村 うんうんうん。
理由②「国内の経済問題を解決できなかった」
王 2つ目の原因。これは内政問題です。
キーワードは「正義」なんですよ。
馬政権時代は正義なき8年間でした。
これは何かというと、財閥による土地の売買によって
不動産価格が高騰し、
若者たちは自分の給料で家を買えない、という状態が起こった。
あと、貧富の格差もひどく、
8年間、何の解決の兆しも見えてこなかった。
その結果、政権運営能力が国民党にはない、と
見なされ、多くの人が民進党に票を入れたんです。
里村 今まで日本の中国寄りの新聞・テレビでは、
馬英九氏はインテリであり、
格差の問題を解消しようとしている人物として、
いいイメージで報道されることが多かったです。
しかし、実際、台湾では「期待が裏切られた」という、
そういう感じが強かった?
王 そうなんですよ。
裏切られたんですね、完全に。
馬英九は外見としては爽やかな感じじゃないですか。
里村 はい。
王 ですから、
「馬英九にだまされた。だまされていた8年間だった」という
評価を持つ人は多かったわけなんですよ。
里村 これは大事なことなので、
重ねてお聴きしたいんですけれども、
その「裏切られた」という思いとは、
「中国と緊密にしていくことで、
経済がよくなるんだ、という話があった。
しかし、それは絵に描いた餅だった」
ということですね?
王 そうです。
中国との関係を緊密にしていくことで、
経済がよくなったならばよかったのですが、
そういうことは全くなく、
悪くなっていく一方だったんですよ。
だからうんざりしているんですね、人々は。
里村 うーん。なるほど。
それが今回の総統選と
議席数に表れている、ということですね。
王 赤裸々な結果ですよ。
18もの政党が乱立する中、「時代力量」が5議席獲得
里村 今回の選挙、どんな特徴があったと言えますか?
王 今回の選挙は、政党が乱立しました。
18政党も立候補してきたんですね。
里村 18政党!? はあー。
王 18政党もあったのですが、
中でも注目を集めたのが「時代力量」です。
里村 新政党の「時代力量」ですね。
王 「時代力量」は今回、5席も獲得して
第三政党になりました。
彼らはどんな政党かというと、
一昨年、台湾では学生たちが政府に抗議して
立法院を占拠した事件(※)があったんですね。
その時、立法院を占拠していたのが、
今の「時代力量」の人たちなんですよ。
里村 「ひまわり革命」「ひまわり学運」と呼ばれる
運動ですね。
台湾の若い人たちが行動した、ということで
ザ・ファクトでも報道しました。
その運動のリーダーたちが「時代力量」を
作ったんですね。
ひまわり革命
王 そうです。みんな若者で、今回、当選したのも、
30代、40代の人たちです。
当時、ひまわり学運をなぜ起こしたか、というと、
中国に対して、これ以上台湾に近づくのは
「NO!」と。中国と貿易関係で緊密になりすぎたら、
台湾の自由と民主主義は危なくなる。
だから、彼らは立法院を占拠して抗議したんですね。
今回、その人たちが立候補して、
一気に5議席を獲得したんです。
※2014年3月、中国と台湾の間でのサービス分野の
市場開放を目指す「サービス貿易協定」の強行採決、
およびその内容に反対した学生たちが立法院を
一ヶ月にわたり占拠し、政府に抗議した。
里村 日本でもSEALDsなど若者の政治運動が
話題になった。ところが、日本の場合は
中国の脅威をリアルに見ようとしない人たちの運動。
台湾の場合は中国の脅威をリアルに直視して
運動を起こしているんですね。
王 正反対です、正反対。
里村 なるほどねえ。
王 だから、今回の民進党圧勝も、
一つには、「時代力量」の若者たちがアピールし
主張してきた内容が浸透した結果だとも
いえるんです。
(②へつづく)
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