4回にわたってお届けした「米国2016最新事情」も
今回が最終回。

TPP(環太平洋パートナーシップ)は
日本の農業にとって脅威なのか?
去年1年で全米のテレビ・ラジオ番組70本に出演した
及川幸久さん(幸福実現党外務局長)は、
「TPPはむしろチャンス」だと語る。

NY空撮

さらに、及川さんはNYで日本のリンゴの
世界進出を仕掛けつつあるという。

(第1回目、2回目、3回目はこちらから)
「アメリカの歴史認識」――いま、アメリカ人の考え方が変わりつつある。
米国2016最新事情①

オバマ政権が「アメリカの自信」を失わせた? 米国2016最新事情②
なぜ、ドナルド・トランプが人気なのか? 米国2016最新事情③

TPPは日本の農業が世界に出るチャンス

及川里村

里村 日米関係でいうと今、
TPPが一番大きな話題になっています。
日本でもTPPに関して、特に農業分野では
非常に不安が強い。そこで自民党の支持層も
かなりいろいろな反発もあったりしましたが、
この辺はどのように思いますか。 

及川 特に一番話題になったのは農業分野ですね。
私はアメリカに何年か住んでいて、
アメリカという国はやはり農業大国だと
思うんですよ。
大量に作る農産物を世界に売らなくてはならない。
だから農産物の輸出国なんですね。
だから、さっき話題に出た米韓FTAも、
要はアメリカの農産物を売るところを
探していたので、韓国に売りたかったわけですね。
韓国に売りつけたわけです。
それを今、世界中にやっているわけですね。
TPPもそういう部分はかなりある。
逆に、農産物以外、あまり売れるものがないので、
アメリカでね。
だから、それは確かに日本に対しては
ものすごく影響があると思いますね。
だけど、逆に見ると、
日本の農産物をアメリカや海外から入ってくる
輸入品に対して守るのではなく、
むしろ外に打って出る。
日本の農産物こそ、世界最先端の技術を持った
付加価値商品なので、
それを海外で売るという考え方があると思うんです。
実際に青森県のリンゴ、日本のリンゴの生産量の
半分以上は青森ですね。
青森県のリンゴはすでにアジアで売られています。
生産高の1割近くは台湾や香港、シンガポールに
売られています。日本のリンゴは世界最高ですよ。
割ったら蜜が出るなんてね。

芝生とりんご

里村 「リンゴは甘いんだ」と驚かれる。

及川 ですよね。私はニューヨークに
住んでいたことが一番多いんです。
ニューヨーク市は大都会ですが、
ニューヨーク州はリンゴの産地なんです。
よく「ビッグアップル」って言うでしょう。
リンゴの産地だからです。
ちょうど緯度的にも青森と同じぐらいの緯度なので、
寒い所なんですよ。
寒い地域でリンゴをいっぱい作っていて、
ニューヨークのスーパーに行くと
リンゴのコーナーに大量のリンゴが置いてあって、
10種類ぐらいいろいろなリンゴがあるんですね。
だけど、どのリンゴも酸っぱいんです。
アメリカ人にとっては、リンゴというのは
酸っぱいもの。
だけど日本のリンゴって、甘くて酸っぱいですね。

里村 じゃあこれから、こちらから売り込みに
行くんだと。

及川 そう。

里村 TPPだから。

及川 TPPをきっかけに、アジアもいいけど
欧米に売り込んだらどうかと。

ニューヨークで日本のリンゴを売る

里村 実際にその動きがあるわけでしょうか?

NY街

Andrey Bayda / Shutterstock.com

及川 口でばかり言っていても何なので、
私自身も実際に売り込んでみようと思いまして。
ニューヨークの高級レストランに日本のリンゴを
卸すというのをいま、試しにやっています。

里村 どちらのリンゴですか。

及川 長野県のリンゴです。

里村 リンゴの生産地ですね。

及川 長野のリンゴは蜜の量が半端じゃないんです。
アメリカ人は、リンゴを切ったら蜜が出るなんて
見たことないから、それだけでもすごい魅力になる。

りんご

特に長野の場合、山岳地帯じゃないですか。
場所によっては標高1000メートルぐらいの所で
リンゴを作ってるんです。
標高1000メートルって昼と夜の寒暖差が激しいので、
実が締まるんです。
だから甘くて締まったものは、
リンゴを食べた時のシャキシャキ感があるんです。
普通、東京のスーパーで出回っているリンゴは、
そんなにシャキシャキしていないんですね。
もうちょっとボソボソっとしている。
長野県の人はよく「ぼけてる」って言うんですけど、
実がぼけてるんですよ。
だけどシャキシャキ感のあるリンゴって、
長くもつんですね。だからこれは輸出にはぴったり。

里村 今、長野県はミシュランガイドに紹介されたり
しているので、海外の方もすごく多い。
もともと明治以降、欧米の方が最初に避暑地で
軽井沢に来られた場所ですから。

及川 オリンピックをやったでしょう。
オリンピックをやって、「NAGANO」という名前は
もう世界ブランドになっている。
でも、その中に眠った宝物のようなリンゴだとか
ブドウだとか、洋梨なんかもすごく美味しいんですよ。

里村 洋梨だけど、西洋の洋梨より美味しい。

及川 はるかに。何がいいかというと、
アメリカに住んでいて一番困るのは、
安全な食材がないことなんです。
アメリカの農業って、要は農薬農業ですよ。
それはアメリカ人が一番困っているんです。
安全な食材がないから。
でも日本の食材は安全で美味しいんですよね。
これは今、世界が求めています。

買い物

里村 中国なんかは、さらにそのアメリカよりも
農薬漬けで、野菜なんかはみんな農薬を落とすための
洗剤で落としてから使っているぐらいだけど、
その中国でも富裕層が日本の食品だけを安全で
美味しいといって手を出している。

及川 そのとおりです。

里村 アメリカでもそういう現状があるわけですか。

及川 そうですね。アメリカには、
やはり世界トップの富裕層がいますから、
彼らはやはりそういう食材を探していますよ。
自分たちの子供たちに、
普通のアメリカ人が食べるような物を
食べさせられないと思ってますから。
いま、求められているものは、
やっぱり日本の物なんですよね。

里村 「値段が違うから勝負になるのか?」という
(ニコニコ生放送の)コメントも来ていますが。

及川 アメリカの富裕層は、値段は関係ないです。
自分たちが毎日食べるもので安全なものだったら、
いくらでも出しますよ。
特に、果物や農産物を海外に輸出するとしたら、
空輸ですよね。船で輸出するわけにいかないから。
そしたら、その分だけ高くなるけど、
それでもそれを買うマーケットがあるのが欧米です。

里村 しかも、アメリカなら3億5000万人の
マーケットがあるわけですからね。
もちろん生活が厳しい方もいらっしゃるけど、
口に入れるものに関してはまったく値段に
糸目はつけないという方もいらっしゃいますからね。

大きく考えて、世界に打って出よう!

及川 そうですね。私は以前、
この話をJAの幹部の人たちにしてみたんです。
みんな言っているのは、
「JAとしてはTPP反対で通してきた」
「しかしもう反対と言っていられない状況に
なってきた」
「じゃあいったいどうしたらいいんだ」と。
それを考えてこなかったので、
「本当に困っている」と言っています。
私が「ニューヨークでリンゴを売りませんか」
という話をすると、食いついてきますよ。
これもさっきの慰安婦の問題と一緒で、
政府がやろうとしているのは補填だけです。
TPPが始まったら、農家はみんな赤字になるから、
その分、国民の税金で補填しますって。
それもわかるけど、いや、むしろ海外に打って
出ましょうよと。
それもやるのは民間だと思います。

里村 逆に、日本という国は政府にとにかく
頼るように、よらしむべしということで
一生懸命やるけど、もう頼っていても
スピードは遅いし、ちゃんと正しいことを
はっきり言ってくれないし、やっぱりだめですよね。

shutterstock_180961934

及川 トランプさんは随分前に
自身の考え方について書いた本を出しているんです。
それが『Think Big』という本なんです。
つまり、でかく考えようと。発想を変えて
大きく考えることによって、道は開けると。
まさにその部分でいうと、私は彼の思想は好きですよ。
ちなみに、うちの党総裁も『Think Big』という
同じタイトルの本をアメリカで
出しているんですけど、
やはり今、みんな考え方がスモールになっちゃって
いる。農業だけじゃない。

里村

里村 そこなんですよ。何も持たないというのは
確かに自由な生き方でいいんだけど、
ライフスタイルとしてはいいかもしれないけど、
日本人がとにかく「シンク・スモール」で
欲張らなくなり過ぎてるんじゃないかというのを、
ちょっと感じます。

及川 そうですね。
しかし、その日本人が作っているものには、
世界最高のものがトヨタの車だけじゃなくて、
農産物でも精神的なものでもいっぱいあるんですね。
それをどんどん世界に向けて発信すべきだと
思います。なぜかというと、世界が求めているから。

里村 日本に今年来る外国人、政府目標は
もう数年後に2000万人を掲げたら、
もう今年、ほぼ1900万人を超えてしまった。
これは別に政府が何かやったんじゃなく、
日本の民間の日本人の努力ですよ。

及川 いかに政府の目標がスモールかと
いうことですよね。

里村 GDPが600兆円とか、
「もう本当にそんなもの、来年にでも達成するよ」
という大きな目標が出せないものかなと。

及川 本当にそうですよね。
我々日本人が思っている以上に、
世界は日本を評価しているし、
また世界は日本的なものを
必要としていると思います。

「勇気」と「自信」を持って世界に発信を

里村 今日、一貫して及川さんから
出てきた話は、従軍慰安婦、あるいは原爆投下。
いろいろなところで日本人はもの申せるんだと。
そういう立場だし、技術もあるし、
伝統もあるし、歴史もある。
日本人はもっと「勇気」と「自信」を持って、
発信すべきじゃないかと私は感じました。

及川 里村さんが最後に言われた
「勇気」と「自信」という言葉。
日本人に足りないのはこれだけじゃないですかね。
私だって、別に英語は得意でも何でもないですよ。

里村 いやいや、でもまあネイティブの方たちと
やり合うというのは。

及川

及川 ただ何をしたかというと、
「勇気」を振り絞っただけです。
最初はラジオに出たってうまくしゃべれないし、
全然スピードは合わない。
だけど、それをやり続けることによって
タイミングも合ってきて、
「ああ、こういう時にこう言えばいいんだな」
というのも、だんだんわかってきて。
やはり必要なのは「勇気」と「自信」でしょうね。

里村 そうなんですよね。いま、(ニコニコ生放送の)
コメントで、「1人あたりのGDPが20位になった。
もうどんどん下がっている」といただきました。
日本人は「これぐらいでいいじゃないか」と、
こういうことを言った作家の方もいました。
「上り坂じゃなくて下り坂を考えよう」と。
そういう中で1人あたりGDPが20位以下になった。
後ろを見たらイタリアとかスペインとか、
言っちゃ悪いけど財政負担がギリシャに次いで
心配される国々ですよ。
やっぱり日本人はちょっと発想を変えないと。

及川 そうですね。それを変えるためにも、
私は自分でできることは何かといろいろ考えて、
さっきのリンゴです。
ニューヨークで日本のリンゴを売ってみたい。

里村 しかし、ビッグアップルに
アップルを売り込む……(笑)。

及川 そう。それが事実として起こすことによって、
自分自身も長野の人たちも、日本中の人たちも、
やっぱり「あっ、変えられるんだ」と。
さっきの「チェンジ」です。
本当に変えられるんだということが
実証できると思います。

里村 「ザ・ファクト」で採り上げてきましたが、
どうも日本の影響力が大きくなってくると
中国、あるいは韓国が歴史カードを出して
日本の口封じをしようとするように見える。
「あんたたち、これを忘れたの」
「そんなに偉そうに言える立場なの?」みたいな形で
歴史カードを切る。
それに対して、日本が負けてきた感じがするんですね。

慰安婦像

及川 はっきり英語で日本の立場を言うべきです。

里村 やはりそういう時期は来ていますね。
日本人のこれから求められるもの、
いま、「勇気」と「自信」とありました。
及川さんは、これからどんなことが
日本に求められるか、
あるいは日本は何をやるべきだと感じますか。

日本にできることはたくさんある

及川 「正しさ」というのを、日本も世界も
考えなければいけない時代に入ったと思います。
優柔不断ではいけない。
何が本当の正しさなのかというところ。
「従軍慰安婦」問題も「南京事件」のことであっても、
今のISISのことであっても、何が本当に正しいのか。
それをしっかり考えて、「これが正しい」と思ったら
誰に何を言われようと堂々と自信を持って
世界で声を上げる。
これが本来の日本のサムライの姿です。

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里村 私、思うんですよ。ついこの間、日本では
クリスマスが終わったばかりです。
もしかしたら、日本人はどこの国よりも、
クリスマスをお祝いするんじゃないかと。
アメリカでは、公共の場で「メリー・クリスマス」と言うのは
宗教的マイノリティーに悪いので、
「ハッピーホリデー」という言葉を使い、
あるいはクリスマスツリーを
「コミュニティーツリー」という言葉で
呼ぶようになっているところもあるというんです。
日本人って1週間のうちにクリスマスをお祝いし、
そして除夜の鐘を聞いてしんみりとし、
さらに年が明けると初詣と、
3つの宗教をバーッと1人で経験するんです。
最近、そこに新たに今度はハロウィーンが入ってきて、
いったいどこの国かと思うんだけど、
私はこれは節操がないというよりも、
この日本人の寛容性というか、
受け入れる姿勢はすばらしいと思います。
それはまさに今、及川さんがおっしゃったサムライ。
つまり、いい加減なのではなくて、
しっかりと自分を持っていれば、そういうものを
受け止めることができるんです。

screenshot-www.youtube.com 2016-01-14 13-57-44

及川 特にキリスト教徒とかイスラム教徒が
持っている排他性。何でも自分と違うものを切って
いくのに対して、日本人は違いを受け入れますよね。
いま、世界が求めているって、これじゃないですかね。

里村 そう思います。今のIS、「イスラム国」の問題、
イスラム過激派の問題も歴史的に見るならば、
決してイスラム過激派だけのせいではありません。
実は歴史上、その遠因を作ったのは
ユダヤ教やキリスト教諸国だった面もある。

及川 となると、日本の果たすべき国際社会での
役割というのは、やっぱり大きいですよ。

里村 日本はもっと積極的に「地球の正義」を
発信していくべきだと思います。
ますます日本が堂々と自信を持って
発言するためにも、
ねじ曲げられた歴史でもって
口封じされるようなことがあっては
ならないですね。

及川 そのとおりですね。

里村 ありがとうございました。
今日は非常にたくさんのお話を聴かせていただいて、
私も目から鱗が落ちた思いがいたしました。(了)

(第1回目、2回目、3回目はこちら)
「アメリカの歴史認識」――いま、アメリカ人の考え方が変わりつつある。
米国2016最新事情①

オバマ政権が「アメリカの自信」を失わせた? 米国2016最新事情②
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