話題の大統領候補ドナルド・トランプ氏。
日本でも、トランプ氏の発言は報道されることがあるが
その「政策」や「哲学」が報道されることは少ない。

トランプ

しかし、トランプ氏を「政策」の観点から見たときに、
報道とはまったく違う氏の姿が見えてくる。
今回から4回にわたって、
「政策」の観点からドナルド・トランプを分析する。

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トランプは大統領になったら何をするつもりなのか?

里村 昨年末のザ・ファクトでは、「アメリカで
ドナルド・トランプがなぜ人気なのか」という点に
ついて、少し触れました。
ともすれば、その発言の過激さばかりが
採り上げられがちなトランプですけれども、
「トランプがもしアメリカ大統領になったら、
いったい何をするつもりなのか?」
この点について、あまり日本では伝えられていません。

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そこで、今回、この共和党の大統領候補である
トランプの政策について、幸福実現党外務局長の
及川幸久さんにお聞きしたいと思います。

及川 よろしくお願いします。

里村 もう1年ぐらい前から、共和党候補の中で
支持率が高いのは今だけで、すぐに落ちるだろうと
言われながら、結局年を越し、いよいよ2016年、
大統領選の年になりました。

及川 もう本当にワシントンの政治評論家や
政治家はみんな「トランプの人気は今だけだ」と
言っていたのですが、実はトランプの支持率は
上がり続けているのです。
いま、共和党支持者の約40%がトランプ支持で、
第2位にきているテッド・クルーズでも
その半分ぐらいですから、ダントツですね。

里村 それがいったいなぜなのかというのが、
今日のザ・ファクトのテーマです。

「メキシコ移民を送還せよ」発言の真意は?

及川さん1s

及川 ドナルド・トランプが昨年、
正式に大統領選挙に立候補を表明したとき、
彼が最初に出した方針は移民問題だったわけですね。
アメリカではおもにメキシコの国境から
メキシコ人、もっと南の中南米のヒスパニックと
言われる人たちの移民が不法に入ってきている。
つまり、不法移民がたくさん入ってきています。
それに対して、これは何とかすべきだと。
その一つの政策として、メキシコとの国境に壁を
作ってはどうかと。
これがとても話題になって、たたかれたわけですね。

里村 日本でも、「暴言」の類いとしてとらえられていました。

及川 これをもってトランプは「移民排斥主義者」
「ファシスト」「レイシスト」だと言われるように
なったのです。
しかし、彼が言っているのは「そもそもアメリカは
移民の国だし、自分の先祖もドイツからの移民だ。
だから私は移民は歓迎する。
私が問題にしているのは非合法の移民、不法移民だ。
この不法移民を今のアメリカ政府が放っておいて
いるのが問題なのだ。
一方で、きちんと合法的に入ろうとしている移民が、
列をなして入国を待っている。
不法移民を許していては、その人たちに申し訳ない
じゃないか。
この不法移民に対してしっかり対処するのが
国家であり、不法移民を放置しているのは
国家ではない」という考え方なんですね。

里村 移民全体ではなく、不法移民について、だと。
日本のマスコミはそういう部分を採り上げて
いません。その辺がそもそも違うわけですね。

「イスラム教徒の入国禁止」発言の真意は?

イスラム難民

里村 一方で、イスラム教徒を全面的に入国させない、
と言っているようですが。

及川 イスラム教徒の入国禁止という発言は、
「イスラム国」(IS、ISIL)に関連した問題ですね。
12月初旬にオバマ大統領が、「イスラム国」への
対策をホワイトはハウスから生中継で国民に話して
います。
しかし、実はその内容があまりにも何もなくて、
対策になっていなかったんですね。
その直後にトランプが「対策がないのだったら、
一時的にでもイスラム教徒の移民が入るのを
止めたほうがいいんじゃないか」と言ったわけです。
つまり、マスコミには「すべてのイスラム教徒を
入れるな」というふうにしか出ていないのですが、
トランプが言ったのは、「『イスラム国』への対策が
明確になるまでは、一時的に止めるべきだ」という
言い方でした。

里村 なるほど。そういう方針がはっきりするまでは、
まずアメリカ国民の安全を守るために。
実際に、その後、連日のようにイラクのバグダッドや
トルコのイスタンブール、さらにはインドネシアの
ジャカルタでテロが起きていますから、その発言自体
には否定できないものがありますね。

及川 そうですね。極端と言えば極端ですが、
筋が通っていることは確かです。

トランプ人気に、オバマもヒラリーも反応?

obama

里村 先日、アメリカではオバマ大統領が
最後の一般教書演説を行いました。
日本でも報道されましたが、トランプを意識しての、
トランプ批判のような演説だったようです。
逆に言えば、いかにトランプの存在が大きくなったか
ということではないでしょうか。

及川 そのとおりですね。
アメリカのマスコミはこぞって批判していますから、
本来、それを見ている国民の間で、トランプの人気が
あるはずはないのですが、
なぜか突然、オバマもヒラリーもトランプ批判を
始めているんです。
ひとつには、10人近くいる共和党の候補者の間で
討論会、いわゆるディベートをやったんですね。
FOXニュースやCNNが主催した共和党の討論会を
2400万人が観たというんです。
2400万人というと、プロバスケットボールNBAの
決勝戦やメジャーリーグのワールドシリーズの
視聴者数とほぼ一緒です。これはトランプ効果だと
いわれています。
2400万人が観るようになったなら、
これは大統領も意識しますよね。

他の候補者とは違うトランプの特徴は?

里村 なるほど。日本のマスコミが伝える以上に、
何かが起きているわけですね。
そこでいよいよ本題です。
具体的な政策の前に、
「トランプの特徴を一言でいうと」と
事前に及川さんにお聴きしました。

トランプ候補の特徴を一言でいうと…

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里村 ずばり、「経営者目線」
これはどういうことでしょうか。

及川 今の共和党討論会の例でもそうなのですが、
通常、大統領候補者が集まってディベートしても、
おもしろくないですよね。
そんなものを観る人も特定の人たちだけなんです。
では、どうして2400万人もの人々が観るように
なったのか。
トランプ自身が言っているのは、
「プロの政治家の討論会だったら観ないだろうが、
自分はプロの政治家でも何でもない。
自分はビジネスマン、経営者である。
プロの政治家が言うことに、
もうみんな飽き飽きしているんだ。
そうではなく、もっと本音が聞きたいんだ。
どうしたらアメリカをよくできるかという
本音が聞きたいんだ」ということです。
だいたい討論会というのは、マスコミがいやな質問を
するわけです。
それに対して、いわゆるプロの政治家というのは
かわし方を知っていて、正面からは答えず、
印象だけよくするテクニックをみんな持っている。
だけど、この人は本音を言うわけですよ。
本音を言うから、ますます叩かれるんですけど、
一般の視聴者は「本音が聞きたいんだ」と。

里村 確かに、株主総会で株主から質問が出て、
経営者が答えられなかったら失格ですもんね。
それを逃げたりしていたらだめですね。
経営者のほうは、しっかりと会社の利益について
意見するわけですし、そういうことが共和党候補の
ディベートの中でも始まっているわけですか?

及川 始まっていますね。
今言われたように、国を「会社」にたとえるなら、
「株主」に当たるのが有権者、国民です。
国民からみると、オバマだけではなく、
共和党も民主党も両方ともだめじゃないかと
いま、思われているということです。

里村 なるほど。一番肝心な問題ほどぼやかし、
言質をとられないようにすることが
政治家の知恵と言われますが、
トランプの場合はそうではなく、
「何がアメリカの利益か」ということを
はっきりと言うと。

及川 そうですね。普通の政治家はマスコミに
言質をとられるのが怖いので正面から答えない。
しかし、この人はマスコミは怖くないようで、
マスコミに何を言われようと、
本音を言ってるんですね。

里村 あれだけ叩かれていても怖くない。

及川 ええ。さっきの移民問題にしてもそうだし、
すべてのことに関して、彼からしてみると
「いや、正直に言ってるだけだ」ということ
なんだろうと思います。

「教育省」は要らない?

里村さん1s

里村 なるほど。では、「経営者目線」に
話を戻しますと…

及川 「経営者の視点」でいえば、
まずは「無駄を省く」。コストカットですね。

里村 いわゆる「小さな政府」ですね。

及川 そのとおりです。
彼が言うには一番無駄なのは、政府の中の
無駄な省庁だということです。
例えば、日本の文科省にあたる教育省がありますが、
トランプは「コレは要らない。全面廃止だ」と
言っているんです。
「なぜ教育を国家が決める必要があるんだ? 
教育は各州ごとで決めるべきだ」と。
アメリカでは憲法で特に教育について触れられて
いないため、もともと教育は州ごとに決めるもの
だったんですね。
それが今、教育の中に「コモンコア」と呼ばれる
全米一律の教育カリキュラムができているんです。
要するに、落ちこぼれをなくすために、
全米一律のカリキュラムで教育しましょう
というものですが、これを進めているのが
オバマであり、賛成しているのがヒラリーなんです。
それに対して、トランプは「なぜ政府に
自分の子供たちの教育を任せなきゃいけないんだ」と、
真っ向から反対しているんですね。

里村 この「経営者目線」――そこが、
ほかの共和党候補とトランプ氏の違いを
際立たせてるということですね。
(第2回につづく)

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