中国が香港を飲み込もうとしています。危機感を感じた香港の民主派は活動を活発化し、51万人が参加するデモやさまざまな抗議活動を行っています。ザ・ファクト取材班は幸福実現党外務局長の及川幸久氏とともに、香港民主派のキーマンに話を聞きました。

8月31日に中国が決定した、香港行政長官選挙の制度改正

2014年8月31日、中国政府は香港行政長官選挙の制度改正を決定。この決定について、香港民主党党首のエミリー・ラウ氏は「最悪」との評価を下しています。

事実上、立候補できるのは親中派のみ

今回の制度改正で、2017年から、香港の民主派が長年望んでいた一人一票の「普通選挙」が導入されることになりました。しかしその内容を見ると「普通選挙」とは名ばかりのもので、立候補するには中国共産党の意向を受けた指名委員会の過半数の推薦が必要なのです。つまり、事実上、立候補できるのは親中派のみで、民主派は締め出されるということ。ラウ党首は、「この制度のもとでは、北京政府が選んだ人だけしか(香港行政長官選挙の)候補者になることが許されていません。これは公平な選挙ではありません」と訴えます。

本当の意味で候補者を選ぶことができない名目上の「普通選挙」

形の上では、北朝鮮でさえも一人一票の「普通選挙」が行われていますが、候補者は一人しかいません。一人一票が許されていなければ民主主義ではありませんが、「一人一票」だけでは足りず、それだけでは本当の意味で候補者を選ぶことができないのです。ラウ党首は、香港の人々がこの決定を受け入れていないと話します。

圧力をかける中国、抗議する香港

経済的地位が低下する一方、政治的な脅威は高まっている「香港」

中国が香港に踏み込んで締め付けを行う理由について、幸福実現党外務局長の及川幸久氏は、経済的な側面と政治的な側面の両方から次のように話します。「一つは、経済的に、中国全体における香港経済の位置が急速に下がっている。逆に政治的な面で見ると、西側の自由陣営が、香港を入り口にして中国全体に自由と民主主義の価値観を入れ込みたい、それによってあわよくば中国を変えたいと狙っているわけです。北京政府からしてみたら、香港がこの政治的な脅威になっている」と。そういった意味でも、今回の選挙制度で香港を締め付けたい意図が働いているようです。

香港返還記念日の7月1日、ここ10年で最大規模の反中デモ

香港返還記念日の2014年7月1日、およそ51万人が参加する、ここ10年で最大規模の反中デモが行われました。このデモのリーダーの一人、22歳の青年ジョンソン・イェン・チン・イン氏は「これはニセモノの民主主義です。香港の若い世代は失望しています。中国政府からの圧力を感じています。我々は香港の核になる価値観が香港政府によって改悪されていくのを目撃しています。それが若い世代が香港の未来が見えないと感じている理由です」と、取材班のインタビューに答えました。

習近平政権下、中国の人権はどのような状況か

また、エミリー・ラウ香港民主党党首、ジョンソン・イェン・チン・イン氏からは、中国の国内事情について次のような話が聞かれました。

中国本土の人権弁護士が逮捕されたときのために写真撮影

ラウ党首は、ときどき中国本土の人権弁護士たちと会うことがあり、彼らから中国の窮状について聞くのだといいます。人権や法の支配の観点から見ると、今中国は非常に過酷な状況にあるとのこと。ラウ党首は、人権弁護士たちが香港に来ると、いつも彼らの一人ひとりと写真を撮り、彼らが逮捕されたときにはその写真を大きなポスターにして、釈放の要求を中国政府に訴えるよう備えています。

国内政治を厳しく規制しようとする習近平国家主席

ジョンソン氏もまた、「いま習近平は国内政治を厳しく規制しようとしています。中国は一人の人間(習近平)に権力を集中しています。これが民主主義であるはずがありません。これは独裁、もしくは全体主義です」と話します。

中国に自由と民主主義を広げるためにも国際社会の支援が必要

現在、国際社会の反応はいまひとつ

今回の香港行政長官選挙制度の件で、香港民主党初代党首マーチン・リー氏がイギリスのキャメロン首相に応援を要請しにいきました。しかしキャメロン首相は面会を拒否し、代わりに中国政府に対し、「この件に関してイギリスは中国側にも香港側にも立ちません」というメッセージを送りました。現段階においてはこのように、国際社会の反応はいまひとつといえましょう。

「香港の中国化」ではなく「中国を香港化」せよ

3年前の2011年5月22日、幸福実現党の大川隆法総裁は香港で講演を行っています。そのなかで大川総裁は、「香港の中国化」ではなく「中国を香港化」せよ、と指針を示しました。実際に今、香港の民主化運動は着実に強さを増し、香港の自由と民主主義を守るために闘う人々の数は着実に増加し、この勢いは学生にも広がっています。

民主化運動の今後(1) 民主派がこれからすべきこと

ラウ党首は、「我々がこの度の中国全人代の決定を支持しないことを示すため、そして北京政府がこの決定を考え直すように、香港の人々とともにデモ以外にもさまざまな形で抗議しなくてはいけません」と語ります。これから先については、非常に大きな困難を伴うものであっても、できることをやるだけ。この戦いが今後どれくらい続くのか、私の世代か、もしくは次の世代かわからずとも、戦いをやめることはないのだといいます。同氏はさらに、「それは(香港に限らず)他のあらゆる場所でも同じことです。この戦いは続いていきます」と言及しました。

民主化運動の今後(2) 若い世代にできること

ジョンソン氏は「我々に今すぐできることは、社会運動を続け市民の意識が目覚めるのを促すことです。もし我々が成功できたら、そのときマカオや台湾、中国本土にも影響を与えることができるでしょう。この成功は中国国内の民主活動家を勇気づけることができるでしょう」と語りました。

10月1日には、香港の民主派によって金融街を占拠するデモ「オキュパイセントラル」が予定されています。
中国によって香港の民主主義が殺されるのではなく、この香港の自由と民主主義を中国に広げていかなければなりません。そのためにも、日本のみならず国際社会の支援が今こそ必要なのです。