今回のザ・ファクトは、衆議院選挙の争点のひとつでもある、消費税増税についてお送りします。

2014衆院選の争点「10%への消費税増税」

消費税の8%増税後、景気が低迷したことを受けて、今回安倍総理は消費税のさらなる10%への引き上げを、2017年4月に延期するという判断に対する信を問うという形で衆議院を解散。

月刊「ザ・リバティ」編集長の綾織次郎氏は、消費税の増税は日本にとってものすごい破壊力になると誌面で何度も述べてきたとしたうえで、「実際、GDPがマイナス成長になり、今年の国家の税収もマイナスになると予測できます。これについては誰でも冷静に考えれば予測できることでした」と指摘しました。

実際に1989年4月、消費税3%を導入したときには、全体の税収はマイナス8兆円になりました。5%に増税したときも、全体の税収がマイナス10兆円になりました。
今回の選挙での安倍総理の公約では、「2017年4月に消費税10%を増税行う」と言っていますが、これをそのまま実施されるとすると、今まで3回起きてきたことが、もう1度起きてくるということです。
しかも消費税10%への引き上げは”問答無用でやる”と言っており、これは非常に怖いことではないでしょうか。

消費増税のトリックに完全に騙された?

1年前、ザ・ファクトでは、マクロ経済の専門家である筑波大学・国際大学名誉教授の宍戸駿太郎氏のシミュレーションを紹介。その中で、消費増税を行った場合、実質GDPが5年でマイナス6%になることをお伝えしました。

いま、このシミュレーションが、現実となろうとしているのです。

宍戸氏は今回の景気失速について「はじめからこんなにマイナスが大きいと相当なものがまた来る。(GDPのマイナスは)津波で言うと第一波。第二波、第三波はもっと大きいのが来る。ちょっとくらいの最初の波だけで、あとは来ないと思ったら大間違いである」と述べました。

それでも安倍総理が10%への増税を進めようとする理由について、「消費増税のトリックに完全に騙された」と指摘。「いったんスタートすると、もっと税率を上げないといけなくなる。ヨーロッパでは10%~20%上がっているため、『日本はこれだけ借金が多いからさらに上げたほうが将来の孫・子のために次世代のためにいいんじゃないか』という話になる」「逆に消費増税をやったために、(孫・子の代は)もっと落ち込む可能性がある」と語りました。

各党政策比較!消費税増税をどう考える?

今回の衆議院選挙における各党の消費税増税の考え方をご紹介します。

◇賛成:自民党・公明党・民主党・次世代の党・維新の党

自民党、公明党、民主党、次世代の党、維新の党が消費税増税に賛成です。
自民党、公明党に関しては、2017年4月に10%に引き上げることを公約にしています。さらには軽減税率の導入することを明確に謳っています。軽減税率は食料品などの生活必需品の税率は低く定めるものですが、商品によって税率が違うため、売る方も買う方も、とてもややこしい税率になります。

◇反対:日本共産党、生活の党、幸福実現党、社民党

日本共産党と生活の党は増税中止を訴えています。5%に戻すと訴えているのが幸福実現党と社民党です。

反対各党の違いとしては、社民党・共産党・生活の党は「格差是正」を目的にしています。低所得者の負担は減らして、豊かな層や大企業から税金をたくさん集めることを考えています。

一方で幸福実現党は「経済成長」を目指しています。
消費税を5%に下げるだけではなく、所得税・法人税の減税、相続税の撤廃なども掲げています。さらには規制を撤廃・緩和することによって、教育や社会保障、農業などの分野に、新しい民間の力を活用していくことを考えています。

いろいろな政党がありますが、減税で経済成長をさせようと訴えているのは、幸福実現党だけということになります。

過去にあった財政再建の成功事例を2つ紹介

宍戸氏は日本には経済成長による財政再建の成功例が2つあると教えてくれました。

1.戦前:世界大恐慌から脱出した高橋是清蔵相
日本は池田内閣の時にかなりの減税しましたが、実は一方で増収入があったのです。池田内閣の10%成長というのは、片方で猛烈な財政収入が増えてくるので、政府はどんどん減税をしました。するとまたそれが消費を刺激し、成長が成長を呼ぶようないい循環が起こったのです。

2.戦後:高度経済成長を実現した池田勇人首相
高橋是清蔵相も、完全雇用にもっていきました。このときの高橋是清は、買いオペレーションで国債を発行して、日銀が買い取るという形にしました。日本はこのときものすごく自然増収が上がって、それをどんどん減税にまわしていい循環を作っていったのです。このように財政出動を行って必ず中央銀行が裏方で支えるという方式を取れば、景気は割合早く回復するのです。

宍戸氏は以上の事例から、「経済を成長させていけば財政が助かる」と指摘し、「一石三鳥で、経済成長・財政再建・社会保障の3つは、やれば決してやれないことはないというのが我々の主張です」と訴えました。

消費税を5%に戻すことは、ノーベル経済学者のポール・クルーグマン氏も言っています。あれだけ増税しろと言ってきたIMFも、今、10%増税を避けるべきだと言っているのです。

今の日本には「経済成長」が必要

いずれにしても、増税ではなく「経済成長」が必要だということではないでしょうか。
今、安倍総理は、「消費税を増税することによって社会保障のコストを賄う」「財政再建をする」と言っていますが、実際には難しいことです。

たとえば、政府を通じて年金・医療・介護をやった場合に、両親2人を考えたとするならば、1年間のコストが560万円もかかる計算になります。もし自分たちで面倒を見るという場合、もっと安くすることはできるわけで、ものすごく割高な体制になっているのです。

また、この社会保障を消費税で賄おうとすると、40数年後には消費税70%近くになるという試算もあります。政府にまかせて高齢社会のなかで社会保障を設計しようとしたら、どんなに消費税を上げても上げてもきりがありません。

我々国民も将来の自分の生活をすべて国家にゆだねるという危険性について考えるべきでしょう。こういう体制は国家にたいして一切のNOが言えなくなる社会です。生活のすべてを国家にゆだねることは「隷従への道」であることを知らなければなりません。

減税や規制の撤廃・緩和、こうしたことによって、民間の力を引き出すことが一番大事なことなのです。民間の活力を引き出すためにも、大きな政府ではなく小さな政府、省庁のスリム化でもって財源を生み出す。民間の創意工夫、活力に委ねることによって、やはり経済成長を促すことこそが、大切なのではないかと思います。

経済成長を掲げる政策が、いま、求められています。
景気低迷から脱し、日本経済を上向かせることができるのは、どの政党なのか。

12月14日の2014衆議院選挙では、有権者のみなさまに、正しい選択をしていただきたいと思います。