集団的自衛権の行使を考えるうえで重要な点

5月30日、日本の安倍首相は、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議のなかで演説を行い、多くの国が拍手をしてその内容に賛同の意を示しました。演説のなかで安倍首相は、中国を名指しこそしなかったものの、南シナ海をはじめとする海洋覇権主義に対して強く牽制し、フィリピンやベトナムを支持する考えを明らかにしました。

今回の安倍首相の演説は、ある意味で集団的自衛権の行使に一歩踏み込んだものになっていますが、日本国内においてはこの件について、自民党と連立与党を組む公明党のなかで非常に強い慎重論や反対論が存在しています。これは言うまでもなく、公明党の支持母体である創価学会からきているものですが、創価学会だけでなく、ほかの日蓮宗の流れをくむ団体、あるいは仏教諸派が総じて反対であるとのことで、今日本の政治が揺れています。

ポイント1:すべての戦争が悪とは言い切れない

集団的自衛権の行使についての慎重論、反対論としては、「日本が戦争に巻き込まれる」「とにかく戦争は悪いもの」といった意見が大半を占めています。しかし、「すべての戦争が悪だ」と言い切れるわけではありません。侵略国家が存在する際、これに対して外交上の努力が足りない時には、戦いという手段になることはやむをえないことです。これをもし悪とするならば、警察が犯罪者を取り締まることを悪とみなすことと同じです。したがって今、私たち日本人には「戦争にも善悪があるのだ」という知恵が求められているのです。

ポイント2:日本は世界の良き調停者となるべき

日本には、先の大東亜戦争で「アジアやアフリカから植民地主義を払拭した」という意味において、大きな功績があり、多くの国々が日本に対して感謝の念を持っています。その証拠に、今回のシンガポールの会議で安倍首相が演説した際に、大きな拍手が会場を包みました。安倍首相の靖国参拝を批判するような中国側の出席者からの質問に対して、「国を守る英霊を弔うことは当然」「日本は平和国家として歩んできた」との答えにも、同じく拍手が沸きました。これはアジアの国々が日本のリーダーシップに期待していることの表れでもあり、集団的自衛権に反対する人々による「アジアの国々が警戒する」との主張が、まったくの誤りであることの証明にほかなりません。

日本人一人ひとりが気概を持って行動するべき時

東アジアに明白な侵略国家が現れた以上、火事が起きているときに自分たちだけその消火活動に参加しないということは許されない時代、一国平和主義を続けられない時代に突入しています。今、日本人一人ひとりが、「世界平和を守るためのリーダー、調停者になるんだ」という気概を持って行動せねばならない時なのです。

※今回緊急発刊された『日蓮聖人「戦争と平和」を語る』のなかで、集団的自衛権の必要性と中国に対する警戒について明言されていますので、どうぞお読みください。