3月に開かれた中国全人代で、2021年のGDP成長率目標は6%以上と設定された。しかし、5か年計画の目標は明示されない異例な展開となった。中国経済は今、どうなっているのか?本当に6%成長をするだけの力があるのか?今回、最新の経済データから見た中国の実態と、中国共産党政権の行方を、ジャーナリストで元産経新聞記者の相馬勝に聞いた。

00:00 2021年、中国全人代のポイント~習近平独裁強まる
05:47 データからわかる悪化している中国経済の実態
13:56 中国共産党立党100年、独裁国家はどこへ向かうのか?~台湾侵攻の可能性

【ゲスト:相馬勝氏】

相馬さんプロフィール

相馬勝氏Business Journal連載「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」


2021年 中国全人代のポイント~習近平独裁強まる~

本来主役であるはずの李克強首相の存在感がなかった

Still0423_00006

里村英一幸福実現党政調会長(以下、里村):
中国国内についてお伺いしたいと思います。3月には全人代がありまして、これからの明確な成長目標をあまり出せなかったとかいろんな報道がありましたけど、中国の全人代会議で何か今までと違っていたこととかありますか?

相馬氏:
習近平独裁というのが前面に出てきたということでしょうね。本来なら全人代というのは李克強首相が政治活動報告をして首相がメインなるはずなんですね。ところが、習近平になってからそうなんですけど、全人代の委員長も習近平さんの友達なんで「習近平軍事思想」とか言って、習近平社会主義思想とか全人代代表をみんな習近平は見てるわけですよね。「習近平にならえ」という形になってるわけですよね。ですから、習近平が行った内モンゴルとか、そういうところで習近平の演説自体が全部ドーンと一面トップに入ってるわけですね。そういう点では、全人代っていうのは首相の専権事項というか首相が報告する場で、首相がやっぱり主役になるべきところが習近平になってしまったことが極めて不自然に映りますよね。前からそうですよね。

里村:
そうですね。その前の胡錦濤時代は温家宝首相がもっと前に出てて、日本人のあまり中国の政治の仕組み知らない方なら、どっちが上なのかよく分かんない方もいらっしゃるぐらいでしたもんね。

Still0423_00000

相馬氏:
そうなんですよ。江沢民時代も朱鎔基が前面に出て、経済政策をどんどん打ってったという形になるんですけど、今回のはオンライン記者会見でしたけども、そういう点でも全然元気なかったですよね。全人代の活動報告もバンバンはしょっちゃってる。普通は2時間~3時間かけてザーッと全部読むんですけど、今回1時間半で終わりって感じで短かったです。

Still0423_00001

里村:
ものすごい形だけみたいになってきたんですね。

習近平は自分に反発する共青団閥を抑え込もうとしている

相馬氏:
完全に主役は習近平さんということで、そういうことが今までなかったんでちょっとびっくりしましたけどね。なぜ、そういうことをするかというと「習近平自体が力を持ってないので自分の力を誇示したい」というところが一番あると思うんですよね。尚且つ、やっぱり胡錦濤さんが共青団閥って、かなり力持ってますでしょ。官僚組織をみんな動かしているのは共産主義青年団といって、若者の中から優秀な人間を党員にして育てて官僚として政治なり経済の仕組みを全部回していく人たちですよね。そのトップが今、李克強さんですよね。いわゆる共青団の共青団閥者がかなり反発してる部分があるんですね。それをなんとか根絶やしにしたいと。それで、今までは上海閥とか共青団閥あったんですけども、要するに共青団閥のスターが孫政才とか重慶市の党委書記が切られていったりとか、次期首相候補と言われた胡春華っていうのが今、副首相として次期首相として言われてるんですけども、今回は全人代の人事のほうをやり方を変える人事法っていうのは改革されちゃったわけですね。

共青団閥・・・中国共産党内の派閥の一つ。若手エリート集団である共産主義青年団(共青団)の幹部出身者で構成される。

Still0423_00002

Still0423_00003

胡春華副首相にとって不利な法改正が今回の全人代で行われた

要するに副首相なり軍事副主席なりが本来ならば5年に1回の全人代で選ぶ、または5年に1回の党大会で選ぶ形になるんですけど、それが今回の場合は2カ月に1回の全人代常務委員会っていうのがあって、その場で副首相も選べることになったと。なぜかというと胡春華さんが今、副首相になって首相候補として目されているのは胡春華さんしかいない。共青団閥の胡春華さんしかいないわけですよ。習近平としたら胡春華になられたら困るわけですよね。だから、次の5月と7月の常務委員会で習近平の子飼いの今やってる幹部を副首相に抜擢しちゃうと。それによって副首相になれば次期首相にはすぐ任命できるわけなんで。そういうようなやり方も今回の全人代で法改正がなされたわけですよね。

里村:
次の中国の指導者が誰かという問題も絡めて大変な問題になってきますね。

相馬氏:
ですから、習近平自体が全部人事も握ることができるということですね。

データからわかる悪化している中国経済の実態

中国企業が抱えている不良債権はGDPの2倍(日本円で約3,100兆円)

里村:
そうしますと、いよいよ影響を与えてくるのが中国の経済状態、人民が食べれないとかですね。これについてはいかがでしょうか。

相馬氏:
2020年の1月から6月の上半期で、240万の中小企業や個人事業者が倒産したというのは今日の新聞にも出てますし、アメリカの会計会社ピーターソン国際経済研究所がそういう統計を出しているわけですよね。それで、なおかつ国営企業は80社がデフォルトになってるという報道もあります。企業自体が不良債権をかかえ込んでるわけですよね。かかえ込んでる不良債権というのは実はGDPの2倍。2倍というと、だいたい中国のGDPって2020年で1,550兆円なんですねですから、3,100兆円の不良債権を抱えていることになります。

里村:
日本円にして3,000兆円を超えるんですね。

新型コロナウイルスの影響で2億人が定職を失っている

相馬氏:
3,100兆円を赤字みたいな形で国家が補填してるのもあれなんですけど。だから、隠しきれなくなって国有企業が80社も倒産しちゃって、結局倒産っていうかデフォルトになって債務不履行になって借金払えない。だから、経営できないってことなんですね。国も助けることはできないってなっちゃったんですよね。そういう危機的な状況にあるわけで、なおかつ 今回のコロナ騒ぎで2億人の人たちが中小企業とかどんどん農民移行とか出稼ぎ農民とかが仕事がなくなってますから、2億人たちがフリーターみたいな状態で、仕事があるときはあるけど、ないときはないっていう極めて不安定な状況になってるわけですね。そういう人たちが半失業状態にあると。中国の経済というのは6パーセントやってくぞと話になって、いけいけどんどんみたいな。今、順調に行ってるような形で今回の全人代で言ってましたけど、実はそういう形で経済というのは極めて悪いし、個人消費もマイナス3.9%ですね。中国の財政企業と国家の財政収入ですね、これがマイナス3.9パーセント落ちてるわけですよね。だから、中国の経済が唯一プラス成長だといっても内実はかなり苦しいというか、赤字なんですよね、国家自体が。

里村:
報道の自由がないんで、全然前面に出てないんですけど。

相馬氏:
そういう事実は全然隠されているわけですよね。それは中国国内でも断片的に報道されてますから。中国の経済そんなに生易しいもんじゃないという状態です。

不動産バブルで開発が滞ったマンションのゴーストタウンが出現

ゴーストタウン

相馬氏:
あと「鬼城」といってゴーストタウンですよね。そういうのがどんどん出てきてるって話ですよね。要するに不動産がバブルになってですね。マンションを建てても建てても業者が国から土地を借りて、業者が金を出して建てるんですけど、資金がなくなっちゃって業者が夜逃げしちゃうという。それに対してマンションを買った住民たちが先にお金振り込んでますから、結局政府は何もしてくれないってことでそのマンションのお金を払わなきゃいけない。入れないマンション自体が月収の26倍になってるわけなんですよね。そうすると ゴーストタウンみたいなマンション自体も本当は価値がないんだけどもそれだけの価値が出てくるわけですよ。どんどん実態のない形で不動産価格が上がってくるといずれ崩壊するという、日本がかつて経験したような形でですね。

里村:
ですから、「中国のバブル崩壊はいつなんですか?」と非常に多くの方から質問受けるのですが、本当に報道の自由はないのでそれはいつかというのはなかなかわからいないと。仮に崩壊しても大きくないように見せると。ただ中国という国が経済的に崩壊する、そういう時は何かしらあるだろうと思います。借金先行の中国で、相馬さんは中国の経済崩壊は大体どれくらいと時期をご覧になってますか?

全人代で5か年計画の目標を出せなかった中国経済が今後どうなるかが注目点

相馬氏:
だから今、中国自体が何をやろうかというと、アメリカの貿易とか海外からの貿易も見込めなくなったんで内需拡大にしていこうって話になるわけですよね。内需拡大といっても結局、小売消費が庶民の消費が落ち込んでいるわけですから。なかなかうまくいかないだろうと。今回の1年間の目標は6パーセントだったけども5年間の5カ年計画の目標は全然公表しなかった。5年間どうやって持ちこたえていけるのかというとこですよね。

Still0423_00007

里村:
仮にいうと、アメリカは駄目で。そうすると、ほんとに日本なんかも標的になるかも分かんないし。海外で内需が駄目なら当然外需のほうで。

日本企業を誘致してモデル地区を建設しようとしている

相馬氏:
内需が駄目なので何とかしようとお金をどんどん回してるっていうようなところで外需でやろうとしてるのは、実は日本にラブコールを送っているわけですよね。日本の経済の企業のモデル地区、企業経営の企業団地みたいなモデル地区を上海とか浙江省の蘇州とか東北のほうの山東省の青島、あと成都、大連の都市に「日本企業を誘致したモデル地区を作る」と言って今、中国は一生懸命日本企業を回ってるんですよね。そこで要するに大きなボール作って生活全然心配ないような形で団地もどんどんやって工場誘致も日本企業ために更地にしてますと。日本企業が入ってくださいというような形でやってるわけなんです。今はちょうど誘致してるとこなんですよね。だから、基本的に「日本企業しか頼るところがない」ということなんですよね。

里村:
そういう意味では、非常に中国というより中国共産党ですね。ある意味で変えるチャンスだから。

相馬氏:
中国に発言力があるのは日本だけなんだと。なぜならば、中国が日本の経済力を頼ってきてるから、日本が「ノー」と言ったら彼らは今後どうなるか分からないと。だから、そういうカードを持ってるんで日本は中国に対して発言力があると。そういうところでトップ同士で話し合って、習近平さんに「今のやり方じゃまずいんじゃないの」と言って妥協させる。

里村:
ほんとに、日本の強い政治が求められるところですね。

立党100周年を迎える中国共産党はどこに向かうのか

経済破綻で崩壊したソ連と同じ道を中国共産党も辿るのか

里村:
最後になるんですけれども、今年中国共産党が100年ということで、共産党側は共産党をさらに永遠に繁栄させてくことがありますが、一方で逆に100年ぐらいでそろそろ寿命も来るんじゃないかという見方もあります。相馬さん、これについてはどのようにご覧になっていますでしょうか?

相馬氏:
100年というは非常に大きな節目でやっぱり ソ連が72年間ぐらいしかもたなかったですよね。なぜ中国は100年持ってるのかというと、やっぱり経済ですよね。今言ったような形で庶民が「中国共産党があるから、今の自分たちの繁栄があるんだ」と。ところが、経済がどんどん悪くなっていって、ソ連の末期には かなりの1000パーセント・2000パーセントとか。すごいインフレでルーブル持ってても庶民は結局鉛筆1本も買えなかった。私も当時のソ連に行って言われてましたけど、社会科学院とか行って言われましたけど、彼らボールペンですら買えなかったんですね。だから、ボールペン12本持ってって「1ダース はい どうぞ」って。ちょっと失礼だったかもしれないですけど、そういうことやったぐらいですから。それでソ連は崩壊していったと。中国が崩壊していくのはどういう形になるのかというと、そういうパターンになってくるんじゃないですかね。今、なぜ中国の人たちが習近平独裁体制みたいな妥協を許さないような習近平にすべて従わなきゃいけないのか、言論の自由もないのになぜ従っているのかというと、経済的にまだマシだからですよね。食べていけるからですよね。それがもし経済が崩壊してしまってマンションが暴落しちゃってという話になったら、習近平を支持はしないんですよね。

里村:
ある意味で、そういう気配がちょっと漂ってるだけに習近平政権はグーっと抑え込みを強めていると。

経済悪化の批判を逸らすために台湾や南シナ海で軍事行動を起こす可能性も

Still0423_00008

相馬氏:
その中で、それをそらすために「台湾に侵攻するぞ」とか、実は「南シナ海でアメリカと一戦交えるか」とか。そこら辺で軍事的な策略・作戦を取って、そこで国民の目をそらせるという形に出てくる可能性もあるわけです。

里村:
それがあるので最近も米軍のトップが 台湾侵攻が思ったより早いという発言をしてます。やっぱり可能性はあるわけですね。

相馬氏:
そうなんですよね。やっぱり、台湾はとにかく「われわれの領土台湾を取り戻す」ってことで目をそらせることができるわけなんですね。戦時体制下になれば国民が一致団結するわけですよね。だから、習近平は一所懸命、今回の全人代でも「戦争の準備をしなきゃいけない。われわれは非常に不安定な状況にあるんだ、安全保障的にはかなり危険な状況にあるんだ」というようことを一生懸命言ってましたよね。だから、習近平軍事戦略思想みたいなことが今回の全人代でもクローズアップされましたけど、いよいよ中国共産党が崩壊の際になるときに習近平がとる手というのは「台湾侵攻によって、国家・国民を一致団結させる」。それぐらいの手しかないんじゃないですか。

里村:
なるほど、いずれにしても21世紀の残った人類のおおげさにいうと宿題、人権を認めない共産主義国家、巨大なものをどうするかというのがいよいよこの宿題を何とか解決できないかどうか、そこに来てるなっていう感じはいたしました。今日はありがとうございました。

相馬氏:
ありがとうございました。

相馬勝氏出演シリーズ

欧米の「中国包囲網」に激昂する中国~習近平独裁政権・最新事情(ゲスト:相馬勝氏)【ザ・ファクト】

サムネイル02

中国経済の悪化と習近平独裁(ゲスト:相馬勝氏)〜シリーズ「中国は今」①【ザ・ファクト】

サムネイル

【ニュース】中国最新事情 米中貿易戦争で習近平独裁体制はどうなる!?〔ゲスト:相馬勝氏〕【ザ・ファクト2018.08.03】

maxresdefault

共産党大会後の中国内部で今、何が起きているのか!?【ザ・ファクト×相馬勝氏対談】

maxresdefault (1)

世界を脅かす毛沢東の「呪縛」~中国で進行する第二の文化大革命【ザ・ファクト】

maxresdefault (2)