2015年 6月29日で、「イスラム国」樹立から1年。 一時期勢力が弱まってきたと言われていた「イスラム国」ですが、最近勢いを取り戻しつつあると言われています。

「イスラム国」の現状

「イスラム国」の現状について、3つのポイントをお伝えします。

「イスラム国」の現状(1) 支配領域が広がっている

まず1つ目は、「イスラム国」の支配領域が再び拡がっているという点です。要衝を失って徐々に防戦一方になりつつあったところ、再び要衝を押さえはじめ、5月15日にはイラク西部の最大都市であるラマディを制圧しました。ここは、イラクの首都バグダッドからほど近い要衝。イラク政府はもちろん、アメリカも国際社会も震撼したと言われています。

「イスラム国」の現状(2) 戦闘能力が向上している

2つ目は、支配領域を広げている要因でもありますが、最近、「イスラム国」の 戦闘能力が飛躍的に向上している点です。ラマディが制圧された件については、イラク政府軍の士気が低下していたと言う軍事ジャーナリストもいますが、対する「イスラム国」の戦術、戦略性が非常に高度化していたとも言われています。実際に陽動作戦が実行され、周辺に戦力を差し向けているように見せかけておきながら、本丸であるラマディに大規模な攻撃を仕掛け、一気に陥落させるということが行われました。新たな軍師が現れた可能性もありますが、兵器の性能や火力の向上が証明されたことは間違いありません。アメリカ製の装甲車や、自動車爆弾などが使われていました。「イスラム国」に武器を供給している何者かが存在している可能性も高いと言えるでしょう。

「イスラム国」の現状(3) 指導者層が相次いで殺害されている

3つ目のポイントとして、「イスラム国」の指導者層が相次いで殺害されていることが挙げられます。先月、「イスラム国」のナンバー2が有志連合の空爆によってイラクで殺害されました。それからおよそ2日後、財務の責任者が暗殺されています。シリアでは、アメリカの陸軍の特殊部隊によって、長年「イスラム国」の兵站部分(石油や天然ガス等)を不正取引していたわけですが、この財務責任者はそれら全てを切り盛りしていました。また、内部対立も非常に先鋭化していて、ラマディ陥落後の宴会で、イラク人グループと外国人グループとの間に一悶着あったようです。その後、外国人グループから来ている町の財務責任者が処刑されるということもあったとのこと。「イスラム国」樹立からまだ1年なので、小さな浮沈はいろいろあると思いますが、重要な人材がいなくなっていることは、長期的には見ればなかなか厳しくなってくるのではないでしょうか。

「イスラム国」今後のポイント

これから「イスラム国」がどうなっていくのかについて、3つのポイントをお伝えします。

ポイント(1) アメリカが「イスラム国」にどう介入するか

まず1つはアメリカが今後どう出るかということです。「イスラム国」に対して、どう介入していくのかが、非常に大きいと言えるでしょう。今アメリカは、ラマディ陥落の衝撃から、戦略転換を求められています。ただ、オバマ政権は基本的に中東から引くという公約で大統領になっているので、地上軍を差し向けるかは疑問です。

ポイント(2) イラク政府が国内のスンニ派をどう取り込んでいけるか

「イスラム国」はイラクとシリアにまたがっています。2点目のポイントは、 イラク政府(シーア派主体)が国内のスンニ派と良い関係を作れるかというところ。イラク国内において およそ6割はシーア派で 、スンニ派の方が少数派です。陥落したラマディはスンニ派主体の町でした。先ほど、この戦いにおいてイラク政府軍(シーア派がメイン)の士気が低かったことに触れましたが、要するにイラク政府軍は、スンニ派を守るために命がけになってまでは、「イスラム国」相手に戦えなかったのです。この一件で、イラクに長らくあるスンニ派とシーア派の宗派間の断絶感は強まりました。やはり今後は、シーア派主体のイラク政府が、スンニ派をどうやってうまく取り込んでいくかが鍵になるでしょう。「イスラム国」の補給線も狭めながら、「イスラム国」に対峙していくためには非常に重要な要素です。
これについてはアメリカも一つの鍵を握っているといえるでしょう。アメリカがイラク戦争の後に押さえ込んでいた時は、アメリカ軍が間を持ってスンニ派とシーア派のバランスをうまく取り、スンニ派にもしっかり武器を与えて、自警団として機能させていました。今アメリカ政府は、スンニ派が自分たちの身を守れるように武器を持たせてOKだという法案を通そうとしているのですが、依然、イラク議会は難色を示しています。こうしたことの解決というのが鍵になると思います。

ポイント(3) シリアのアサド政権が今後どうなっていくか

3つ目のポイントは、シリアのアサド政権の今後です。一部メディアでも「今アサド政権は非常に弱体化している」と言われていますが、「大統領抜きにしてシリアをどうやって分割するか」という、新しい体制について、既に話し合われているそうです。大統領の一番の支援者であるイランも、アサド政権を見限りつつあります。もしアサド政権が転覆すると、シリアの広大な土地に無秩序な――もうすでに今、無秩序状態ですが――さらに空白地帯になります。いろいろなスンニ派系の武装組織もいて、まわりの国も介入してくるでしょう。ここに「イスラム国」がどう関与していくのかです。現にいま、イラクとシリアの国境にある検問所は、結構「イスラム国」が握っていることがあります。自由に行き来できるというので、もしかしたらイラクで押し込まれてきたらシリアにだっとなだれ込んで、一気に領域を、国を新たにつくる可能性も否めません。このシリアがどうなっていくかというのは、「イスラム国」だけではなく、中東全体の今後について、大きな鍵を握っていると言えるでしょう。