スミソニアン航空宇宙博物館には、広島に原爆を投下した爆撃機エノラ・ゲイが展示されています。1995年、戦後50周年を記念して、このエノラ・ゲイを中心に据えた「原爆展」を企画。しかし、全米から批判が殺到し、原爆展は中止となり、責任をとるかたちで館長は辞任となりました。

原爆投下への非難を避けたいアメリカ

幸福実現党外務局長の及川幸久氏は、原爆展中止についての著作があるジャーナリストのフィリップ・ノビーレ氏に話を聞きました。同氏によると、スミソニアン博物館の学芸員は原爆展向けに「道義に反するのでは?」「日本に事前警告すべきだったのでは?」といった批判的な問いかけを用意していましたが、このような問いかけ自体が大問題になったとのことです。なぜなら、アメリカの支配層の常識が「アメリカは常に正しく間違わない」「日本人は悪いことをしたんだから大量に殺されても当然だ」「(原爆が米兵の)命を救ったんだ」というものだからです。ノビーレ氏によると、アメリカ大統領ビル・クリントン、副大統領アル・ゴア、当時の米下院議長であり前大統領候補のニュート・ギングリッチ、そして最高裁長官といったアメリカの支配者層がこの原爆展を中止に追い込んだとのことです。これは「まさに犯罪的な検閲」で、「アメリカの恥」だと意見を述べています。

原爆投下の正当化は”歴史上最大の嘘”のひとつ!?

トルーマンが原爆投下を決定した理由として、「原爆投下によって戦争を終わらせなければ米軍兵士100万人の命が失われていた」という説が挙げられていますが、ノビーレ氏によると、これは歴史上最大の嘘の一つだと語ります。また、その説はすでに学会でも否定されているとのことです。「原爆投下は必要なかった」という主張はアメリカの学会では主流で、「広島と長崎への原爆投下が道義的・軍事的に必要だった」という説を今も守っている歴史書や歴史学者は存在しないといいます。ある歴史学者が丹念に資料を調査し、発見した試算によれば、米軍が原爆を投下せず日本上陸をした場合の死傷者は6万3千人。100万人には遠く及びません。

さらにクリントン大統領は、同じ年に改めてトルーマン大統領の原爆投下の決定を肯定する声明を発表しました。当時のトルーマン大統領が行った原爆投下の正当性を肯定することが、69年にわたって守り続けられたアメリカの政治的信条となっており、これに疑問を挟むのは知的な反逆とみなされるのです。