サイパン戦を16歳の時に経験した方へのインタビュー

1944年6月15日からの約1カ月間、マリアナ諸島サイパン島において、アメリカ軍と日本軍との戦闘がくり広げられました。日本側の戦死者はおよそ3万人にのぼったのに対し、アメリカ側はおよそ3,000人。10倍以上の犠牲者を出したサイパン戦は、まさに玉砕と言われる激戦でした。あまりの戦闘の激しさに、自決を選ぶ日本人も少なくなく、バンザイクリフから多くの民間人が命を絶ったと言われています。今回のザ・ファクトでは、当時、日本の委任統治領だったサイパン島で生まれ、16歳の時に電話交換手としてサイパン戦を経験した方に話を聞きました。

玉砕と言われるほど激戦だったサイパン島の戦い

電話交換台に偵察が来て、その翌日だったでしょうか、やはり始まりましたね。高射砲とか爆弾とかで、ほとんどの会社もやられたと思います。私の先輩たちもめちゃくちゃにやられたと思いますよ。(相手は)そこを狙っていましたから。あそこはもう玉砕地と言われるほどの大激戦でした。海にはものすごい数のアメリカの軍艦がいて、そのせいで青いはずの海が真っ黒に見えるほどでした。あれは見ていて気持ち悪かったですね。

(私たちは)その都度避難していくんです。あるとき、ススキがある野原に家族全員集まっていたところへ高射砲をボンボン撃ってこられました。私たちは伏せていましたが、母が私の横にいて、爆弾の破片が体に当たったらしく、即死でした。母はいつも自分が死ぬんじゃないかとおびえてましたが、あのときは私をかばってくれたように思えました。(母の死に衝撃を受けた父は、避難の途中前に進めなくなり、私は家族を置いていかざるをえませんでした)。兄は積極的に前へ進もうとし、「お父さん、早く来て」「もう危ないから早く来て!」と言ったけれど、もう全然動かないんです。

戦時中の日本兵とアメリカ兵のエピソード

日本兵は壕の角に立って中の人を護っていた

(日本兵が盗みをし、女性を襲い、悪い事の限りを尽くしたという話も聞きますが)そんなことないでしょう。日本兵って、そんなことしませんよ。とても礼儀正しいし、秩序を守っていましたよ。1,000人ぐらい入れる大きな壕でのことです。すでにたくさんの民間人が入っていて「もうここはいっぱいだから、あなたたちは入れませんよ」と私たちは追い払われるところだったのですが、角のほうにいらした日本の兵隊さん5名ほどが「このお姉ちゃんたちまでは、ここに入れましょう」と言って、自分の横に囲ってくれたんですよ。とても優しい兵隊でした。民間人は皆中に入って、日本の兵隊さんは角に立って護っているんです。

捕虜になって初めてわかったアメリカ兵の親切さ

私も避難の途中、アメリカ軍に見つかり捕虜となってしまいましたが、アメリカの若い兵隊さんが広場に行ってお水とかいろいろ飲ませてくれたり、とても親切にしてくれました。その時初めて、「なんだ、アメリカさんって親切じゃないか」って思ったんです。(捕虜になったら殺されるから、皆自決したと言われていますが)アメリカ兵は護ってくれましたね。「あなたたちのおじさんやおばさんも、捕虜になってるかもしれないから、そこへ行きなさい」というふうに、とても親切にしてくれました。

孤児がアメリカの捕虜になれるよう手助けした日本兵

(日本軍がサイパンの方にひどいことをしたなど)そんな話、全然聞きませんよ。(日本兵が民間人に手榴弾を渡して自決を勧めたという話もありますが)、敵に捕まって捕虜になるのが恥ずかしいので、自決する人はいましたよ。(ただ、そういうふうに自決を日本兵に強制されたことは)なかったですね。後に再会できた当時10歳の弟は、避難の途中で私と一緒にいられなくなっていたのですが、日本の兵隊さん3人が弟を引き取って、何日か一緒に暮らして、いろいろ食べさせてもらったりしていたそうですよ。「あなたたちの兄さんとお姉さんたちは、たぶん捕虜になってるかもしれないから、あなたもお姉さんたちの所へ帰りなさい」と言って、夜、日本の兵隊さんが弟をおんぶして、「アメリカ兵が来たら手を上げなさい」と言って、道に置いていってくれたそうです。そうして弟はアメリカ兵の捕虜となり、無事に私たち家族と再会することができました。

沖縄にとって、日米同盟は重要

(ある意味で、沖縄は戦いあった日本とアメリカが、世界の平和を守る要として手を組んでいる象徴的な場所だと思いますが、今、日米同盟でアメリカと日本が強い絆で結ばれようとしていることについては)やっぱりアメリカも一緒になって国を守っていくのが、本当の姿じゃないかと思います。今は中国があんな大国になってしまいましたからね。私はアメリカの仕事もやってきましたけど、アメリカ人もそんなに悪い人はいませんし。尖閣諸島を取られたらもう、日本も沖縄も駄目ですよね。だからどうしても、基地はなくてはならないと思います。