3月26日、ドナルド・トランプ候補が
ニューヨーク・タイムスのインタビューの中で
「日韓の核保有容認」「在日米軍撤退」の可能性について言及したと
日本のメディアが報道しました。

トランプ氏の言葉の一部を取り出して、
まるで問題発言のように取り上げられていますが
その政策や真意は報道されていません。

前回に引き続き、幸福実現党 外務局長の及川幸久さんに
日本のマスコミが報道しない「日本は核武装すべき」発言の真相を伺います。


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トランプ氏が「日韓の核保有容認」「在日米軍撤退」の可能性に言及

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里村 3月26日、トランプ氏がニューヨーク・タイムスのインタビューの中で
「日韓の核保有容認」「在日米軍撤退」の可能性について言及したと、
日本のメディアが大騒ぎしていたのですが、
それについて詳しくお聞かせいただけますか。

及川 この記事が日本のマスコミでは
「日本」「韓国」のところだけが大きく取り上げられているのですが、
実際ちょっと違うんですよね。
実際は、アメリカの同盟国、国名前で言うと、
日本、韓国、サウジアラビア、ドイツを中心としたヨーロッパのNATO諸国。
この同盟国の安全保障の在り方全体をトランプ氏は批判したんです。

里村 日本ではもう、日本に狙い撃ちしたかのようなニュアンスで取り上げられているんですが、
決してそうではないと。

及川 そうですね。

里村 その中で、アメリカ人の関心としては、
日本よりもヨーロッパ?

及川 ヨーロッパですね。
特にトランプ氏自身が最も批判したのは、このNATO諸国。

トランプ氏によるNATO批判のポイント

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里村 このNATO批判のポイントは?

及川 これは、このインタビュー自体が
トランプ氏の政策の中であまり語られてこなかった、
外交政策について集中した質問だったのですが、
特にNATOの問題は2つあると。

① NATO組織そのものが時代遅れである。

及川 ひとつは、NATOという組織自体が時代遅れだと。
数十年前にNATOが作られたのは、ソ連の脅威を想定してつくられたのですが、
今はソ連の脅威はないので。
今の脅威っていうのはテロですよね。
「テロの脅威のためにNATOはできていない」ということです。
実際、ヨーロッパではテロについてだれも監視していない。
今、ISISのテロがヨーロッパでおきていますけれども、
ベルギーの状態も非常にひどい安全保障体制になっています。

② アメリカの費用負担が大きすぎる

及川 第二には、NATOにおいて、
アメリカの費用負担が大きすぎる。点です。
そもそも、NATOは加盟国が20数カ国ありますが、
自国のGDPに対して2%は軍事費に使うようにという規定があるのですが、
みんな守っていないのです。
アメリカが3.6%ぐらい使っていますけれど、
ちゃんと規定を守っているのはイギリス等5カ国ぐらいで、
ドイツとかは守っていないんです。
つまり、みんなアメリカに頼りきっているんですね。
NATOの実際の費用の3分の2はアメリカが負担している。
これは、「アンフェアである」と(トランプ氏が)批判しているので、
当然といえば当然のことを言っているのではないかと思います。

トランプ氏は日韓にも相応の自衛力を求めている

里村 しかし、NATOの防衛をアメリカ頼みにするというのは、
ヨーロッパだけではなく、アジアの日本や韓国も例外ではないという感じがしますね。

及川 そうですね。ですから、昨今の日本の安全保障法案では
「集団的自衛権」で、自国の安全は自分たちで守るべきではないか、という論調があった訳ですが、
全く同じことがヨーロッパでも起こっているんです。

里村 そういう中で、日本のマスコミはトランプ氏の日本に対する発言のところだけ取り上げて、
「トランプ氏は日本が嫌いなんだ」とか、外交問題を好き嫌いの感情レベルで論じているんです。
どう思いますか?

及川 実際のトランプ氏のインタビューの全文がニューヨーク・タイムスに出ていますので、
それを読むと、全然そういうニュアンスではないので。
THE FACTは“マスコミが報道しない事実を報道する”というテーマでやっていますが、
本当に、マスコミっていうのは事実を報道していないですね。
捻じ曲げていますよね。

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里村 そうなんですよね。トランプ氏についても、
以前、及川さんの方から「トランプ氏は日本が好きか嫌いかではなくて、
あくまで日米安保のアンフェアな部分、費用負担とかあるいは、
日本が一方的に守られて、日本はアメリカを守る義務はない。
これについて言っているんだ」と。

及川 その通りですね。ぶれていないですよね。

里村 それも、日本だけを特別に言っているのではなく、
アメリカの親しい同盟国全てに言っているんですよね。

及川 そうすると、3月13日に幸福実現党の大川隆法総裁が福岡での講演会で
「トランプ氏が仮に大統領になったとしたら、
相応の自衛力を求めてくるはずです。」と発言されていました。

里村 ということからすると、
今回のニューヨーク・タイムスのインタビューのトランプ氏の発言は、
驚くものではなかった?

及川 全く驚くものではなかったですね。
予想通りですね。
大川総裁が2週間前に福岡の講演で言ったと通りのことを、
トランプ氏がその後に言ってきたので。

世界の安全保障を守ることでアメリカは諸国を従属させていた

里村 言われてみると当たり前のことなんですが、
何故アメリカが日本・韓国そしてNATOまで肩代わりして守ることについて、
アメリカの政治家は何も言わなかったのでしょうか。

及川 アメリカの外交政策の根本的な政策として、
アメリカ一国が覇権国として世界の安全保障を守るということが、
アメリカの“国益”になるんだ、と。
“国益”とは抽象的な言葉ですが、その正体は、
要は「アメリカに従属させることができる」ということ。
日本を取り上げれば、憲法9条で独自の軍隊ももっていない。
結局はアメリカの核の傘の中で守られている。
実質的には、アメリカの従属国という位置。
これをアメリカは良しとしているんです。

トランプ氏は新しい「世界秩序」をつくろうとしている

里村 そうすると、非常に逆説的ではありますが、
トランプ氏が言っていることは、従属ではなく、
むしろ、日本に対して自立を求める発言であると。

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及川 その通りです。
まさに、トランプ氏は今までのアメリカがつくってきた世界秩序を変えようとしていますね。
新しい世界秩序をつくろうとしている。
それは、特に同盟国に対して「自立してほしい」と。
それは、お金が無くなったというアメリカの事情もある。
それぞれが自立して、それぞれが役割を果たしてほしいということですね。

“トランプ大統領”誕生は日本の安保体制を見直す「絶好のチャンス」

里村 それは、今までの我々がイメージしていた世界観、
アメリカが「世界の警察官」として
世界の平和を守るというイメージとだいぶ違うんですけど、
これは見方によれば日本にとっても、
戦後70年続いてきた安全保障体制が大きく変わるきっかけになりうる。

及川 ある意味では絶好のチャンスですよね。
ちょっと日本から離れて、トランプ氏が批判しているNATOを見ると、
ウクライナ問題が起きている訳ですね。
ウクライナ問題をアメリカ側から見ると、
プーチンという現代のヒットラーが脅威になっているように見えるのです。
だから、ロシアの脅威を止めるためにNATOは必要なので、
アメリカがNATOにお金をつぎ込むのは正しいんだと。
それが、今までの考え方です。
トランプ氏からすると、ヨーロッパには
ドイツという立派な経済大国があるじゃないか、と見えるのです。
ドイツは何をやっているんだ、と。
ウクライナはヨーロッパの問題だろう、なんでアメリカが肩代わりするんだ、
そもそも何でプーチンがそんなに悪いんだ、と。
全く発想が違うんです。
これと全く同じことが、日本の状況に言えるんです。
北朝鮮とか中国の脅威があるんなら、
日本は独自に自国を守るそのためだったら、
核を持たしてやってもいいんじゃないかということを言っているんです。

韓国でも核保有についての議論が高まっている

里村 それは非常に頷けるところがあるんですよ。
これだけ日常的に北朝鮮・中国についての動きがあり、
日本の新聞等でも報道されています。
ところが、極端な場合、同じ面か裏側に「安保法案反対だ」という記事、
また北朝鮮が核武装を進めている記事の横で「原発反対」。
こんなデタラメな報道をしているのが日本のマスコミです。
例えば、韓国についても核保有についての議論が高まっている。

及川 韓国では一番大きな新聞社の「朝鮮日報」が
社説で「こうなったら韓国も核武装の論議はしないといけないのではないか」と言って、
実際に論議がされているんですね。
一方、アメリカではトランプ氏だけではなくて
「韓国は核武装せざるを得ないんじゃないか」と韓国の核保有に対して容認論も出ているんです。

里村 それは、今まではアメリカではなかった議論ですか?

及川 そうですね。勿論、一方で伝統的な
「韓国を思い止まらせないといけない」と考えている政治家もいて、
ここで韓国に核を持たせたら、
世界に核が拡散してしまうということで、
止めないといけないという議論はあるのですが、
今まではこの考え方一辺倒だったのが、容認論がでている。
これは新しい世界情勢をアメリカとか韓国の方がよく見ているということですね。

里村 今の及川さんのお話をお伺いして、
日本は平和という国是の鎖国政策体制をとってきた。
海外の情報を耳に入れまいとして。
ある意味で「平和鎖国体制」を“黒船”トランプ氏が壊しに来る。
そういった図式に見えますね。

及川 その通りですね。
さっき里村さんが言われた、
「自立」というキーワードですよね。
今の日本の状態は「従属」だと思うんです。
実際には自立していない、独立国になっていないんでしょうね。
だけど、もしトランプ氏が黒船だったとしたら、
今度こそ自立できるチャンスだと思います。

4月5日、ウィスコンシン州予備選でテッド・クルーズ氏が圧勝

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テッド・クルーズ候補 

里村 なるほど。
さて、そのトランプ氏ですが、
先日4月5日のウィスコンシン州の予備選ではテッド・クルーズ候補に負けました。
テッド・クルーズ候補が圧勝したという見方もあるのですが。
今、日本のマスコミもこの結果を受けて、
トランプ氏が結果的に過半数を押さえることができずに、
共和党の党大会での決選投票になるのではないかと。
こういった見方があるのですが、いかがですか?

及川 現状をみると、ウィスコンシン州の結果は、
7日のカルフォルニア州の予備選まで
残った州の約7割ぐらいをとらないとトランプ氏の当選はないですね。
ですから、不可能ではないけどかなり厳しい。
事実上無理ではないかという声もあります。

トランプ氏が過半数を取れなかった場合、共和党党大会での決戦投票へ

及川 そうなった場合は7月の党大会の1回目投票では
誰も過半数にはいかないです。
すると、里村さんが言われた「決選投票」になるのですが、
これがまたアメリカのルールで複雑なんですが、
今やっているのは50州の代議員を選んでいる訳ですよね。
そして、投票の結果によって、各候補が得た代議員の数を競っている訳ですけれども、
2回目の決選投票になると、1回目の結果が白紙になってしまうんです。
代議員は自由に投票できてしまうんです。

共和党本部は是が非でもトランプ氏を降ろしたがっている

及川 その時に、アメリカのマスコミで言われているのは、
「共和党本部は何が何でもトランプ氏を降ろしたい。」
「そのためには、決選投票になったときに代議員の過半数を
反トランプの特定の候補に集中させる」と。
この2回目の決選投票は誰が出てもいいんです。
今の予備選に出ていない人が出てもいいんです。
今名前が上がっているのも、今出ていない人達です。
例えば、前回の共和党本部候補だった、ミッド・ロムニー。
アメリカの共和党会議長、ポール・ライアン。

里村 大物ですね。

及川 この人達が今のところ大統領予備選に出ていないので、
何もしていない。
なのに、突然2回目の決選投票で出そうという案があります。

里村 なんだか“後出しジャンケン”のような感じがしますね。

及川 その通りです。
過去にもそういった例があるらしいのですが、
もしそれをやったら、今まで長い時間をかけて共和党員の民意を聞いていたのが
白紙になってしまうんですね。
それをもしやられたら、共和党を追われるんじゃないかという声もあります。
実際、テッド・クルーズ氏はこの案に反対していますね。

里村 テッド・クルーズ氏にしても、
決選投票で反対票が自分に来る訳じゃなくて、
結局、“鳶に油揚げをさらわれた”ような状況になるんですね。
テッド・クルーズ氏も同じ立場ですね。

テッド・クルーズ氏が選挙戦を続けるのはトランプ氏に過半数をとらせないため?

及川 同じです。
テッド・クルーズ氏は現時点で過半数に届かないことが分かっているのに、
まだやっているんですね。
恐らく最後までやるのでしょうけど。
このままでは、誰も過半数に行かない。
だから、テッド・クルーズ氏が選挙戦を続けているのは
トランプ氏に過半数をとらせないためにやらされている感じがしますね。

アメリカ国民がトランプ氏を支持する理由

里村 なるほど。
それで決選投票に持ち込もうということですね。
最後に、もう一点。
アメリカがトランプ氏のような方を選ぶようになったのか。
前回、及川さんにもお話いただいたのですが、
結局、口先だけの政治家にアメリカ国民は辟易している、と。
結果を出す経営者などに新しい可能性を求めているという指摘がありましたけれども
これについては、変わっていないということでしょうか。

及川 そうですね。
テッド・クルーズ氏にしても、保守主義というイデオロギーを中心とした人なんですね。
そういう意味では伝統的な共和党の政治家。
同じ共和党の政治家であっても、トランプ氏はイデオロギーは関係ない。
彼の言葉で言うとコモン・センスと言っていますが、
常識の目で、真っさらな目でみたら、
問題解決のためにはこうした方が良いのではないか、という。
そこで彼の言う政策は共和党的ではないんですね。
なので、共和党本部は嫌っているんですが、
でも、国民の立場からすると、これだけ問題が山積している中で
今、求められているのはイデオロギーを振りかざす人ではなく、
「悩みを解決してくれる人」「答えを出してくれる人」。
そういった現れではないでしょうか。

里村 これから7月の党大会まで、アメリカ大統領選からますます目が離せなくなりました。

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