放射線防護学の権威である、札幌医科大学の高田純教授。東日本大震災以降、福島第一原発の20キロ圏内で何度も現地調査を行い、福島の放射線の危険性は極めて低いと説明しています。今回のザ・ファクトでは、高田教授に、福島の実態について話を聞きました。

危険度6段階区分では福島は安全範囲のなかにあった

私は以前、チェルノブイリ原子炉事故災害と、中央アジアカザフスタン・セミパラチンスク核実験場の周辺住民の健康への影響について任されていました。また、世界中の核災害、核放射能災害のデータを持っているので、それを今回の福島と比較し、線量を6段階に区分して、危険度がわかるようにしました。これで言うと、A~Cまでは危険で、DからFは安全です。

広島・長崎、チェルノブイリなどの危険レベル

6段階のうち最も危険なレベルAは、死亡のリスクがあるものです。線量にして4シーベルト以上の値を示すものが該当します。これを瞬時に受けた場合、 (4シーベルトで100人中50人) 死亡のリスクがあります。広島・長崎、それからシルクロードのローラン周辺がこのレベルAを受けた事象として挙げられます。また、チェルノブイリ事故では発電所で働いていた運転員たちがこのレベルAの線量を受けています。
レベルBは、人が死ぬリスクはない1〜3シーベルトの範囲です。事例としてはビキニ災害(アメリカの水爆実験場)が挙げられます。
レベルCの範囲では急性放射能障害を起こしません。0.1〜0.9シーベルトの間です。チェルノブイリ周辺30キロ圏内の住民たちが受けた線量のレベルです。

福島は低線量なので県民は健康被害を受けない

DからFは安全な放射線量レベルで、低線量と呼ばれています。
今回の福島はこのDにあたります。震災元年に福島県の一人ひとりが受けた線量は10ミリシーベルト以下。年間2〜10ミリシーベルトを少しずつ受けるケースというのは自然放射線です。生命があるところ必ず放射能ありで、こういう自然放射線の中で生命は誕生し、営んでいるわけなんです。この単位に注目してください、「ミリ」シーベルトで表されます。1ミリシーベルトは、前述のA~Cで使われていた単位、シーベルトの1,000分の1です。福島県民は健康被害は受けません。福島の子供には放射線由来の甲状腺がんは発生しないという予測になります。

福島第一原発20キロ圏内の放射能の状況

当時の民主党政府は、立ち入り警戒区域を定めて、科学者でも中に入れないようにしてしまいました。最後2日間の現地調査で私が受けた線量は極めて低く、積算で0.10ミリシーベルトほどでした。

不必要な避難によって亡くなった人がいる

原子力安全委員会の基準で「屋内退避」が該当するレベルであり、自宅のなかにいれば充分なので、緊急避難などは必要なかったのです。この程度の線量では、誰も急性障害や放射線障害は起こしません。にもかかわらず、政府が不必要な緊急避難を一方的におしすすめ、住民達は着の身着のままで避難・自主的避難という形になりました。もともと健康な人はいいですが、病人などは、本来の搬送がされずに避難所の体育館などに運び込まれ、そこで亡くなりました。こうした人が70人もいるのです。これは事故災害でなく政府による人災と言えるでしょう。

置き去りにされた牛は今でも元気にしている

菅直人元総理は、放射能・放射線では絶対に死ななかったはずの家畜一万頭以上を殺処分してしまいました。私は震災の元年から調査を続けているのですが、福島の浪江町(なみえまち)に置き去りにされた牛は今でも元気にしています。非常に元気色艶もよく、不健康そうな牛は一頭もいません。そのうえ仔牛も生まれているんです。獣医さんも来ないので完全な自然分娩。生まれたこうしが奇妙な牛はもちろんいません。みんな、元気にしています。

強制避難に科学的根拠はない

福島第一原発の20キロ圏内、浪江町末森(すえのもり)の山本牧場。まだ除染のされていない場所ですが、私はここで個人線量計をつけて2泊3日の調査を行い、1年間で受ける線量を算出しました。線量が一番高くなるような推定をした結果、実線量は17ミリシーベルト程度の安全範囲内におさまっていたのです。

前政権が行った極めてずさんな線量評価

民主党政権は極めてずさんな線量評価で、そこを50ミリシーベルトを超すとし、帰還困難地域に指定してしまっています。屋外の畑の線量率を測って、人体が受ける線量とみなすなどということは、専門家から見たら誤りのことです。実際の人間は動きまわりますので、線量計を装着してそこに滞在しなければ正確に測れるはずはありません。今の安倍政権はすぐに線量評価の見直しを図らせなければいけません。

現政権は早急に線量評価の見直しと意味ある除染を

強制避難に科学的根拠はないのですから、インフラを再建して政府の責任で、住民が戻れるようにする必要があります。今やっている、汚染地の屋根に水をかけて終わっているような除染は、税金の無駄遣いなので早くやめるべきです。本当に意味ある除染は、牛を育てている放牧地の表土10センチを削り取って、きれいな土の上に牧草を育てることです。これによって完全に畜産業、農業が回復できるのです。

恐怖心から正しい判断ができなくなっている

汚染水が生活に与える影響について

新聞やテレビでは、汚染水がタンクや堰(せき)からからあふれたなどと騒いでいますが、事故が起こった施設に高レベルの放射性物質があるのは当然です。しかしそこは管理区域で、誰も原子力発電所に暮らしてないのですから、大事なことはそういうことではありません。私たち国民や福島県民が一番気になるのは、福島第一原子力発電所の敷地の境界周辺の放射線はどうなっているのかです。2013年の7月のデータを見ますと、一番高い値でも「海水100リットルあたり3ベクレル」と極めて低線量を示しています。

人は放射線なしに生きられない

逆に低線量率では「人体の健康を増進する」ということが、いくつかの事例で医学的に分かってきました。人は放射線なしに生きられないということは、もう科学的に証明されています。よく、しきい値、また、放射線リスクの直線仮説と言われていますが、直線仮説が間違いです。あれはあくまでも仮説です。放射線管理上の便宜上の仮説を使っているだけです。本当の放射線医学、あるいは放射線生物学では、低線量はリスクは大幅に低いということが20年以上前から分かっているのです。

がん検診は5~10億ベクレル注射する

がん検診で受けるPET診断では、5億ベクレルから10億ベクレルの放射能を注射しますが、それで死んだ人はいません。海水100リットルあたり3ベクレルで大騒ぎしているこの状況は異常です。もう少し冷静になって、福島第一原発のことを考える必要があります。新聞記者も冷静になって、少しは勉強して記事を書いてほしいと思います。