本日1月6日に行われた北朝鮮の水爆実験。
この実験が中国と北朝鮮の関係に
悪影響を与える――?
今年初の「ザ・ファクトFAST BREAK」で
キャスターの里村英一さんが次のように指摘しました。

里村

中国と北朝鮮、衝突はありえる?

2016年1月6日午後、
北朝鮮は水爆実験に成功した、と発表しました。
この発表を受けて、各国政府は対応に追われています。
この段階(6日16時収録)では
まだ北朝鮮の水爆実験成功が事実なのか確認されておりません。
しかし、もし事実とするならば
今後国際社会にどのような影響が出てくるのか?

韓国はもちろん、アメリカ、そして日本にとっても
大きな問題ですけれども、
私は中国と北朝鮮の関係に注目してみたいと思います。
端的に言うと、中国と北朝鮮が衝突することが
あり得るということです。

「モランボン楽団」ドタキャンの理由は?

そもそも今、中国と北朝鮮の仲はよくありません。
たとえば昨年12月、北朝鮮の「モランボン楽団」が
中国・北京での公演を直前にキャンセル。
突如楽団員が帰国するという事件がありました。

もらん



北朝鮮が「モランボン楽団」北京公演で
使うはずだった映像の中に、
中国が嫌がっていた北朝鮮による
中距離ミサイル発射の映像があった――。
これがドタキャンの理由だといわれています。

習近平と金正恩は仲が悪い?

かてて加えて、中国の国家主席、習近平と
北朝鮮の最高指導者である
金正恩の仲が悪いということがあります。

これは私が数年前、中国に行った時に聞いた話ですが、
習近平の前の代までは、
中国の事実上の最高指導者だった鄧小平が
江沢民(5代目国家主席)、胡錦濤(前国家主席)に
「北朝鮮の金正日(前最高指導者)の面倒を見るように」と
言っていたといいます。
一方、北朝鮮では、初代最高指導者だった金日成が
息子の金正日に「『中国の弟の国』として
言うことを聞くように」と言っていた。

つまり、先の世代のリーダーから
次の世代のリーダーに仲良くするように
申し送りをしていた、ということです。

ところが、習近平と金正恩との間にはそれがない。

しかも、習近平からすると、
「金正恩は生意気だ」という気持ちがあり、
金正恩からすると、
「なんで『兄の国』と頭を下げなくてはいけないのか」
という気持ちがある。
こうした話を数年前、私は中国での取材の際に聞きました。

実際、金正恩は最高指導者となってから
一度も中国を訪問していません。

中国は以前から北朝鮮の核開発を嫌っていましたが、
こうした声を無視して、
北朝鮮が水爆実験までやったとすると、
中国と北朝鮮の関係は穏やかでないものになると思います。

共産国は他の共産国が核保有するのを嫌う

もう一つ、大きな理由があります。
共産主義国の中では他の共産主義国が
核兵器を持つのを嫌うという歴史があるんです。
実は中国とソ連、この関係についてもそれがありました。

すなわち、そもそも核保有国として先行したソ連は、
中国が核保有国となることを許しませんでした。
それを無視して中国は1964年に核実験を行い、
そして、1967年に水爆実験をやって
その結果、1969年に中国とソ連は国境付近で
実際に軍事衝突を起こしました(中ソ国境紛争)。

この中ソの衝突に関してはその後、
鄧小平時代に雪解け時代を迎えましたが、
後発国が核兵器を持つことによって
影響力を強めることを、先行する共産国は非常に嫌います。
この点からも今回の北朝鮮の水爆実験を
中国が面白く思うはずがない、といえます。
したがって、中国の動きに関して言えば、
「南シナ海」だけでなく、「中国と北朝鮮の国境」が
2016年のホットスポットになると思います。

北朝鮮に影響力を持つロシアとの関係を深めよ

いずれにしても、日本としてはどうするべきか?

安全保障体制を強化するのはもちろんのこと、
外交的に北朝鮮に対して、
最も強い影響力を持っているといわれる
ロシアとの関係を深めるべきです。

特に、プーチン大統領の来日をなるべく早く実現し、
日本がロシアと関係を深めていくことです。
これによって北朝鮮の動きを牽制することができます。