9月16日、安倍首相の突然の辞任受けて、菅政権が発足しました。安倍首相が培ってきた日米関係の強化、覇権主義を加速させる対中関係など、立ちはだかる課題は山積しています。そして迎える11月のアメリカ大統領選・・・。今回、政治学者のロバート・エルドリッヂ氏が今後の対中外交をシミュレーションしました。

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【ロバート・エルドリッヂ氏】
エルドリッヂ研究所代表。政治学博士。
1968年米国生まれ。
神戸大学大学院法学研究科博士課程修了。
元在沖縄米海兵隊政務外交部次長。
東日本大震災の「トモダチ作戦」の立案者。

菅内閣誕生で日米関係はどうなるか

里村英一幸福実現党政調会長(以下、里村)
特に 日米関係を中心に今後どのようになるのか、あるいは日本にとってどういうところが大事なのかについて先生の話をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

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安倍総理の辞任が与える影響

エルドリッヂ氏
まず、安倍総理の辞任が日米関係には多少影響を与えると思います。一つ確実に言えるのは今回、駐日米国大使になる予定のワインシュタイン博士が安倍総理と近い関係もあったので、おそらくそれがワインシュタイン博士が任命された一番大きな理由だったと思います。従って安倍総理がいなくなったことで、新しい政権との調整がもう少し時間がかかるかなあと思います。

ワインシュタイン

ケネス・ワインシュタイン博士

菅政権下の対中外交をエルドリッヂ氏が独自シミュレーション!

エルドリッヂ氏
菅さんになるということがちょっと前から感じていたんですけれども、そこでいろんなシミュレーションをちょっと自分なりにやりました。もし 岸田氏・石破氏になった場合は、中国が非常に好意的な日本寄りの政策を取ると思っていたんです。中国との接近ができるような環境作りはしていたと思うけど、菅総理に対してはおそらく相当厳しい政策を中国がとると思います。ほぼ安倍政権を後継したという形になった場合、政策の継承もするし、さらにその関係の人たち、関係する文化、官邸の中の文化・やり方問題を含めてそのまま引き継ぐので、それが中国にとってやりたい放題になるのはもう分かっています。「こういうようなやり方だったらここ押したらいい」、「ここ押したらさらに弱くなる」。もし中国によって菅政権が倒された場合、例えばちゃんとした選挙という形で、党員選挙でできなかったことを春にやって、例えば中国寄りの候補が出た場合、中国のシナリオ通りになることも考えられる。

岸田・石破

バイデン候補が大統領になった場合は親中政策が取られる

エルドリッヂ氏
もし 大統領選挙でバイデン政権になった場合には中国寄りの政権になるので、非常に心配しています。

里村
アメリカは上院も下院も中国に対してはかなり厳しくなってますけど、政権のスタンスとしたら、やはりバイデンがもし大統領になった場合は、絶対に中国とやはり融和の方に行きますもんね。

エルドリッヂ氏
そうですね。例えばトランプ政権に協力しない外交・安全保障の専門家たちがワシントンにいるんですけども、彼らは必然的にバイデン政権の方に仕事が欲しい。その中に中国寄り、例えばトランプ政権を批判する理由の一つが「中国に厳しすぎる」ということは、必然的に中国寄りのバイデン政権になることが簡単に予測できる。

バイデン

ジョー・バイデン米大統領候補

日本は「自由・民主・信仰」の価値観を共有できる国と関係強化すべき

里村
私は、もしバイデンさんが大統領になったら本当に日本の政界も財界もまた雪崩をうって 中国詣でを始めるんじゃないかっていうのを、ある意味で心配してるんです。そういう時に 今後の日本の政治家の考え方として、私たちTHE FACTでは、単純に八方美人で、どこともうまく付き合おうとかという考え方を日本はずっと戦後とってきたんですけども、どこかでやはり一つ線を引く物差し、つまり自由や民主主義あるいは信仰など、そうした人権も含めて、そういう普遍的な価値観を認めて共有できる、例えば人・仲間をまず大事にするのか、そうじゃなくて経済さえよければもう人権とかそういう自由とか民主主義はあまり構わずにって、私はやはりそういうスタンスというものをはっきりさせる必要があると。ところが 未だにテレビなどの政治討論などを見ていると、日本の政治家やあるいは評論家と称する人たちが曖昧にしてやればいいんだと。そして、うまく口では言いながらまた裏では手を結ぶと。「それが政治なんだ」ということを言うような方たちが普通にまだテレビに出て国民はそれ見ているわけです。私は非常に、もしかしたら20世紀は態度はある程度、曖昧にすることでとりあえずの平和があった時代があったかもしれない。私は21世紀、これからそれは非常に日本にとって危険なことではないかと考え、また THE FACTの番組の中でも話しているんですけど、いかが思われますか。

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今まで以上に日台関係が重要になる

エルドリッヂ氏
そうですね。信念を持って 透明性を持って説明責任が非常に求められていると思います。価値観が本当の意味で共通しているところと、どんどん連携すべきと思ってます。その意味では、やはり台湾との関係、そしてやはり香港で行われていることは、日本がもっと発言すべきと思っています。だから私は、日本と台湾の関係が日米関係ほど、あるいは日米関係以上に重要と思っています。日本にとって台湾が失われてしまうと日本が確実に危なくなるので、その意味では安倍政権は何もしてこなかった。台湾に関してほとんど、ほとんど何もして……。

里村
台湾の有名コメンテーターの方も「はっきり言って失望しました」って言ってました。安倍政権にはもっとやってくれると思ってたと。

范世平さん

安倍首相の台湾に対する姿勢に失望している范世平氏(国立台湾師範大学教授)。范氏は台湾で人気のテレビコメンテーターでもある。

詳細はこちらの動画をご覧ください
【向中國說再見】コロナウイルスの抑え込みに成功した台湾の「自由」と「民主主義」(專訪:范世平國立台灣師範大學政治學研究所教授)【ザ・ファクトREPORT】

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日本にとって一番危険なのは「中国」

エルドリッヂ氏
ご存じのように私も2年前、ちょうど今頃「『日本版台湾関係法』を作るべきだ」と提案したんですけども、完全に無視されていた。やはり日本が全部先送りするんです。良くなるとか希望を持ちながら、結局そうならない。だから日本にとって一番脅威なのは、はっきり言いますけど「中国」です。北朝鮮によりはるかに中国のほうが危険です。なぜなら中国は日本を貶めようとしている。国際社会から日本の存在を消す、少なくとも発言力・外交力・経済力・文化力を貶めようとしているので。それを是非気付いてほしいと思います。

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2020年秋にかけて世界情勢は重要な局面を迎える

里村
そうすると、今年の9月に自民党総裁選から新しい総理大臣が誕生する。11月にアメリカで次の大統領が確定すると、大切な秋になりますね。ここで判断を間違うと日本という国にとっては、ちょっとオーバーな言い方をすると、「亡国」、国を失う方に行くなと、今日のお話を伺いして思いました。

エルドリッヂ氏
日本パッシングの時代が再びなることは否定できないと思います。

里村
日本にとって 本当に判断・選択、非常に大事なときに来ていると思います。
今回はどうもありがとうございました。

エルドリッヂ氏
ありがとうございます。

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