11月に行われる予定のアメリカ大統領選挙。現在、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン候補が熾烈な争いを繰り広げています。アメリカの大手メディアの世論調査では軒並み「バイデン候補優勢」と報じられていますが、この世論調査結果は本当に正しいのでしょうか?今回、ザ・ファクトは政治学者のロバート・エルドリッヂ氏に話を聞きました。

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【ロバート・エルドリッヂ氏】
エルドリッヂ研究所代表。政治学博士。
1968年米国生まれ。
神戸大学大学院法学研究科博士課程修了。
元在沖縄米海兵隊政務外交部次長。
東日本大震災の「トモダチ作戦」の立案者。

大手メディアの「バイデン候補優勢報道」は事実なのか?

里村英一幸福実現党政調会長(以下、里村)
11月のアメリカ大統領選挙なんですけれども、世論調査等ですとバイデン候補のほうが民主党がちょっと有利だというのは、日本のメディアでよく出てるんですけども、どうなりますでしょうか?

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世論調査と投票行動は同じではない

エルドリッヂ氏
例えば 世論調査ですけれどもそもそもメディアが正しい分析、あるいは正しい方法でやっていることは多分ほとんどなく、信憑性が非常に少ないと言えると思うんですけれども、もう一つの課題は世論調査で、例えばバイデン支持という人たちは、必ずしもわざわざ投票しに行くとは限りません。だから、世論調査と投票行動がまったく一緒ということは断言できないと思います。4年前と同じことですけれども、ほぼ同じ割合でクリントンが勝つと言わ れたりしていたんですけれども、実はトランプが勝った。そのとき明らかになった問題は、世論調査に答える人たちは取材している人たちの顔を伺いながら見てるので、自らトランプを支持していると言える人たちが意外に少なかったんです。結局、静かな支持者が実はたくさんあったということです。

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2016年の大統領選も報道は最後まで「ヒラリー優勢」だった

エルドリッヂ氏
私は 2016年の10月と11月にアメリカを訪問して、いろんな所に行きました。田舎と都会、いろんな場所を取材したんですけれども、やっぱりトランプが勝つだろうということがかなり確定できました。4年前の話ですが、2016年7月の党大会で民主党はヒラリー・クリントン氏を指名したことで、党員の約半分はヒラリーに入れないということで、彼女は勝てないだけど、世論調査では最後までヒラリーが有利だとか優勢だとか言いながら、結局、本音はぜんぜん違っていたんです。

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若者の間で広がる「第三の政党」という選択肢

エルドリッヂ氏
今回はトランプの4年間の業績とか実績を見ることができるんですけれども。それで嫌がる人もいれば、よくやっていると思う人もいる。さらに、民主党があまりにも腐敗だらけの組織で、絶対にバイデンに入れないという人たちがいますので。さらに、例えば若者が「 バイデン・ノーサンキュー」「トランプもノーサンキュー」、そこで第三の政党に入れる傾向がやはりあります。

2020年大統領選挙 共和党・民主党以外の主な立候補者
ジョー・ジョーゲンセン氏/リバタリアン党

リバタリアン党HP:https://www.lp.org/
アメリカの自由主義政党で2016年大統領選挙では、トランプ・ヒラリー両候補を嫌った多くの人々がリバタリアン党に投票した。

ジョー・ジョーゲンセン

ハウィー・ホーキンズ氏/アメリカ緑の党
アメリカ緑の党HP:https://www.gp.org/

ハウィー・ホーキンズ

カニエ・ウエスト氏/独立系
7月に急遽、出馬表明したミュージシャン。

カニエウエスト

2016年の大統領選で最も多かったのは「無投票」と「無党派」

エルドリッヂ氏
あるいは、そもそも棄権する、そもそも投票しない人たちが、非常に多いと思います。実は 2016年の選挙で民主党・共和党で分かれていると言われているんですけれども、実は一番多い層は「投票しなかった人たち」、それが相当の数だったんですけども、その次に多かったのは「無党派の人たち」。その次が民主党・共和党ですけども、国民はもう行かない。あまりにも嫌な人とさらに嫌な人の間だったらもうノーサンキュー。棄権する人たちが今回 いかに投票しに行くのかが大きなポイントです。投票率が高ければ民主党は有利ですけれども、投票率が低ければ歴史的には共和党にとっていいということです。バイデン候補が あまりにも失言が多くて政策は何もない。ほとんどの人々が思っていることは、「トランプ政権が倒れたとしても、次の人はどうするんですか?」ということです。民主党はその答えにはならないので。国民は、そこまでアホじゃないと思ってます。

民主党支持者もバイデン候補の負けを予想している

里村
トランプ嫌いのマイケル・ムーア監督は4年前も、「もう民主党でも負けるぞ」と言って、負けて、今回もまた、マイケル・ムーア監督がやはり「トランプを支援している人は熱心だけど、バイデンを支持しているのは全然、熱心じゃない」ということを言っています。ところが日本のマスコミは、全くアメリカのマスコミを、そのまんま受け入れているだけなので、今エルドリッヂ先生からお伺いした側面が出てこないですもんね。

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メディアが取り上げていないことが「本当のニュース」

エルドリッヂ氏
4年前の大統領選の直後に、東京に来ていたいろんな講演会で、NHK国際部の女性が私の所に来て、彼女は、「私たちはトランプが勝った原稿は用意していなかった」と言っていました。つまり、民主党が勝つという前提で準備していたんです。だから私は彼女に、「これから3カ月間、会社を休んでアメリカを渡って、いろんな所に行ってみてください。特に田舎の方へ。そしてなぜ、トランプが勝ったのかを自分の目で見てください」と言いました。でも彼女はそれはやらなかったけども、結局、同じようにNHKをはじめ、日本のメディアがそのままワシントンとニューヨークのメディアの言う通りの報道をしているんです。視聴者のみなさんに是非分かってほしいのは、「メディアが取り上げているものはポイントじゃない」ということです。取り上げてない部分のほうが重要です。だからあえてこの部分をアメリカのメディアあるいは日本のメディアが取りげていない、こっちのほうがもっと重要なんです。そして、さらに視聴者のみなさんが聞くべきなのは、「なぜこれが報道されているのか」、そして「なぜこれが報道されてないのか」を、いつもニュースを見ながら、自問すべきと思っています。アメリカのメディアは、ほとんど民主党系だから本当の報道はしていない。本当のニュースは公平に報道していないんです。

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里村
なるほど 本当に参考になりました。

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