8月28日、安倍首相が任期途中に辞任を表明しました。歴代最長となる約8年の安倍内閣の成果とは?今回のザ・ファクトでは、政治学者のロバート・エルドリッヂ氏にお話を伺いました。

eld1s_04

【ロバート・エルドリッヂ氏】
エルドリッヂ研究所代表。政治学博士。
1968年米国生まれ。
神戸大学大学院法学研究科博士課程修了。
元在沖縄米海兵隊政務外交部次長。
東日本大震災の「トモダチ作戦」の立案者。

安倍総理の突然の辞任をエルドリッヂ氏はどう見たか

もっと早く辞任すべきだった

里村英一幸福実現党政調会長(以下、里村)
エルドリッヂ先生は 今回の安倍さんの辞任突然だったんですけど 驚かれました?

エルドリッヂ氏
全く。特にびっくりしてなかったです。むしろ長すぎと思っていた。正直、私はもっと早く辞めるべきだったと思います。

里村
もっと早くに辞めるべきだったと。

エルドリッヂ氏
8年間近くの政権で何も実績がないのはもったいないと思う。ちょうどその数日前に彼の叔父である佐藤栄作の長期政権より長いということが確定したんですけども、その直後にお辞めになるのは、ちょっとその意味では違和感があるんです。

里村
そうですね。

エルドリッヂ氏
ゴールラインを超えてすぐやめる

里村
連続在籍期間を超えたら。もうすぐでしたからね。

エルドリッヂ氏
あれが ちょっともう「ずるい」と言うか・・・。

佐藤栄作

里村
記録のためかみたいな。日本だと8年近く、7年8カ月政権が続いたっていうのはちょっと安倍さんに対しては失礼な言い方になるんですけれども、「何もしなかったからそれだけ持ったんだ」みたいなのが、日本的な批評としてはあるんですけどね。

エルドリッヂ氏
なるほど。その批評は初耳です。たぶん、海外には通用しない話ですね。何もしなかったから長持ちできたということ、それすごいなと思う。

里村
私なんか ずっと日本の政治家見ていて、先ほど8年間何もしなかったからみたいなちょっと失礼な言い方をしたんですけど、その一方で対中国にしろ対韓国にしろ、私は安倍政権は今までの政権よりは態度をはっきりせたかなと、小泉政権ほどではないんですけれども、そういう部分はちょっと評価する部分もあります。

エルドリッヂ氏
人間にはやっぱり誰にでも限界があるので、全部が全部できるのは難しいんですけども、やっぱり限界はあるのかなと思います。

エルドリッジさん

政治学者エルドリッヂ氏による安倍政権の総括

里村
そこで 今日は安倍政府の総括について、今一部エルドリッヂ先生からちょっと話がでましたけど、どのように総括できるのかについて、これからまた詳しく聞きたいと思います。

「信念」や「国際性」はあったが、あまりにも「実績」がない

エルドリッヂ氏
まず私は、第2次安倍政権が誕生した時は私は見守りたいと思っていた。これが、3年間の野党民主党の政権が終わって再び自民党になったんですけれども、当時は私は安倍総理をいくつかの基準で見ていたんですけれども、特に評価したのは、まず信念はあると思う。2つ目は国際性がある。信念があって、つまり日本人のアイデンティティーとか日本という国は何かという信念を持つ人。けれども国際性がない人はいくらでもいる。あるいは逆に国際性があって、日本のことをあまり知らない政治家もいくらでもいるんですけれども、安倍総理は両方をしっかり持っていた。それがとても評価できる。そして特に安倍政権の前半のほうには、かなり外交的に活発で、いろんな国々を訪問して日本のことを一生懸命紹介したり売り込んだり連携を図っていたことがすごく良かった思うんです。けれども、それが今からすると、かなり昔の話になっている。日本にもっとも直面している数多くの問題がほとんどと言っていいぐらい進展がない。先ほど態度を示したことは 一定の評価ができると思うんですけれども、その後は何もない。あまりにも実績が少ないのは、8年間何をしてこなかったのかをメモしないといけないくらい、リストアップしないともう忘れるぐらいたくさんあります。

2s_memo

重要な外交課題も進展が見られなかった

エルドリッヂ氏
尖閣問題・ロシアとの関係・中国の問題・拉致問題。拉致の問題ですけれども、拉致された方々、あるいはご家族の皆さんが本当にかわいそうと思っています。政府にお願いしなければならない。本当は政府が最初からちゃんと守る、あるいは積極的にやるべきだった。だけどこれが、特に安倍総理が一番中心的な課題でやるべきだったと思うんです。あと国で言えば台湾ですけれども、この台湾との関係はトランプ政権ができてから4年ですけれども、日本はその間何をしたのか。ほとんど何もしてこなかった。個人的には良いつき合いがあるということですけれども、総理大臣になってからどこまで進んでいるのかが分からない。例えば1つ安倍総理に是非お聞きしたいのが、「先週辞任されたことで自ら、蔡総統にお電話をされたのでしょうか」。例えば、トランプ大統領には電話していましたけれども、是非、蔡総統にもちゃんと電話で報告してください。そして、これからの日本と台湾の関係の姿を描いてほしい。語ってほしいと思っています。

エルドリッヂ氏の尖閣問題に対する提言はこちらをご覧ください。
もし尖閣諸島が中国に実効支配されたら【侵略シミュレーション】

尖閣シミュレーションCG(大)


「尖閣無策」で尖閣諸島は中国に乗っ取られる!?【ザ・ファクト×エルドリッヂ氏対談!1/3】

尖閣無策で

国内問題もほとんど進んでいない

エルドリッヂ氏
あと経済が、一般の家庭が依然として苦しんでいる。教育改革はやっていない。地方創生も全くやっていない。問題を先送りすればするほど問題が山積するんです。解決が簡単になるんではなく、むしろ難しくなる。 複雑になる絡み合ってしまう。安倍首相の「責任感」はどこにあるんですか?この問題を結局先送りしたために、ますます解決が難しくなっていると感じます。私から見れば「この8年間、十分な成果がなかった政権だ」と思います。例えば憲法改正。8年間で何も進んでいない。

eld1s_01

政策の実行よりも公明党との連立維持を優先した安倍総理

里村
憲法改正については、発議に必要な国会の3分の2を抑えるところまで行ってたんですもんね。それは結局、日本の国にとって憲法改正が大事だというよりも、連立を組む公明党のほうが大事みたいな、そちらのほうを結局優先しちゃったということですかね。

親中政党・公明党が国土交通大臣を独占したために「尖閣問題」が全く進展しなかった

エルドリッヂ氏
そうですね。そういう感じもするし、あと例えば今、公明党の話が出ているんですけれども、第二次安倍政権ができてから内閣ができてから、尖閣諸島の件で海上保安庁の管轄している国土交通省の全ての大臣が公明党の人間だったんです。ご存じのように公明党は、「中国寄り」の政党と言われている。だから本当の実効支配を示す政策が打ち出せなかったと思います。

里村
まさに防衛相・外務省ではなく、国土交通省の管轄なんですよね。領土とかそういう問題などは。海上保安庁だって国土交通省に所属しておりますもんね。そこは結構大きかったですね。

エルドリッヂ氏
だから、これが派閥の論理なのか、あるいは連立政権の論理なのか、あるいは安倍総理の哲学なのか分からないですけれども、これは大きな打撃だと思います。

2s-2

安倍政権が残した課題は多い

里村
そうすると、安倍政権の短い時間の中なんですけども、総括についてお伺いしてきましたけれど、結論としてエルドリッヂ先生が仰りたいことについてお伺いしたいと思います。

エルドリッヂ氏
多くの国民は安倍総理ご自身に対して、「お疲れさま」と仰っしゃっているんですけれども、それはいいと思います。私も「お疲れさま」と申し上げたいんですが、でも同時に残した課題が多すぎるので、歴史がどう評価かするのかがこれからの課題ですけれども、今生きている私はちょっと厳しい意見を持っていますね。

里村
やったことより、やらなかったことのほうが多かった。宿題のほうが多くなった、ということですね。

エルドリッヂ氏
そうですね。